組換え体マウス卵胞刺激ホルモン(rec-mFSH)を用いた過排卵誘起

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抄録

【背景】過排卵誘起では非下垂体由来のeCGやhCGが頻用される。これらは下垂体の卵胞刺激ホルモン(FSH),黄体形成ホルモン(LH)様の活性を持つが,効果の差異,投与個体での抗体惹起,感染因子のリスクなどの問題が存在する。一方,下垂体由来のFSHやLHも相互の夾雑の問題がある。本研究では,純度が保証される組換え体マウスFSH(rec-mFSH)の作製を行い,過排卵誘起活性を調べた。【方法】マウスFSHのαとβサブユニットcDNAを単一のベクターに組み込んだ遺伝子をCHO細胞に導入して,安定的にrec-mFSHを発現する細胞株を樹立し,培養上清として回収して,時間分解蛍光法による濃度測定,顆粒膜細胞を用いたアロマターゼ活性測定による力価の算出を行うとともに,過排卵誘起を検討した。【結果】rec-mFSHは培地1mlあたり1933ngで生産されており,力価は11.19 IU/µgであった。過排卵誘起では,7.5 IUで単発投与した群では過排卵は起こらなかったが,同量を12時間おきに5回投与した群と,賦形剤(polyvinylpyrrolidone(PVP))と共に1回および2回投与した群では過排卵が確認できた。特に,5回の頻回投与とPVP添加の2回投与では頻用されているeCGとほぼ同等の排卵数が得られることが確認された。【考察】頻回投与やPVP添加の投与により満足できる排卵数が得られたことは,持続的な卵胞発育がrec-mFSHによって引き起こされたことを示しており,また,PVP添加は体内での短い半減期を改善する効果をもたらしたと考えられる。賦形剤の使用によりrec-mFSHの必要量を減じることが帰来される。本研究により,過排卵誘起の活性を有するrec-mFSHの生産系が確立され,さらに,賦形剤の有用性が示唆された。今後,現在進めている組換え体マウスLHをrec-mFSHと組み合わせて,マウスのゴナドトロピンを用いたマウスの性腺機能調節機構の研究を展開する予定である。

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  • CRID
    1390001205715479808
  • NII論文ID
    130005051074
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or2-21.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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