雄ヤギフェロモンが雌ヒツジのLH分泌と中枢神経系のc-Fos発現に及ぼす影響

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  • Effects of the goat male effect pheromone on LH secretion and Fos-immunoreactivity in the central nervous system in the ewe.

抄録

【目的】ヒツジやヤギでは、成熟した雄の被毛を嗅がせると、雌のパルス状黄体形成ホルモン (LH) 分泌頻度が増加する。これは被毛に付着する雄効果フェロモンの作用だと考えられている。興味深いことに、ヤギのフェロモンは雌ヒツジに対して活性を示すとの報告がある。そこで本研究では、まず雄ヤギ被毛抽出物の雌ヒツジに対するフェロモン活性を検証すること (実験1)、この実験系を用いて雌ヒツジ中枢神経系における雄効果フェロモン情報伝達経路を組織学的に検討すること (実験2) を目的とした。【方法】成熟雌セントクロイ種ヒツジを供試し、2006年3月から6月に実験を実施した。曝露する試料には、雌ヤギでのフェロモン活性を確認した成熟雄ヤギの被毛抽出物酸性画分 (雄ヤギ被毛抽出物)、対照としてヤギでフェロモン活性を示さない去勢雄ヤギ被毛抽出物酸性画分を用いた。各試料は10分間隔で2分間ずつ計3回ヒツジに曝露した。<実験1>雌ヒツジへの試料曝露の前後2時間、10分間隔で採血を行い、血中LH濃度をRIAにより測定した。<実験2>雌ヒツジを試料曝露2時間後に過剰量ネンブタールで安楽死させ、頭部を灌流固定して脳を採取した。嗅球、視床下部および扁桃体、梨状葉を含む組織から凍結切片を作製し、Fos抗体を用いた免疫染色を行い、Fos免疫陽性 (Fos-ir) 細胞の局在を解析した。【結果と考察】<実験1>雄ヤギ被毛抽出物曝露後2時間の血中LH濃度は、対照と比較して有意に高く (n=8, P<0.05)、雄ヤギ被毛抽出物は雌ヒツジに対してフェロモン活性を持つことが示された。<実験2>雄ヤギ被毛抽出物曝露群 (n=4) の副嗅球、扁桃体内側核、後内側皮質核、梨状葉後腹側部、前分界条床核、弓状核、内側視索前野におけるFos-ir細胞数は、対照 (n=3) と比較して有意に多かった (P<0.05)。主嗅球、扁桃体前皮質核等の領域では有意な差は認められなかった。Fos-ir細胞の増加が確認された領域は、雄ヤギ被毛抽出物曝露によって活性化することが考えられ、雄効果フェロモン情報伝達経路の一部を構成していることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715654144
  • NII論文ID
    130007023976
  • DOI
    10.14882/jrds.100.0.11034.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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