ウシ顆粒層細胞のステロイド産生におけるリポポリサッカライド(LPS)およびペプチドグリカン(PGN)の影響

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タイトル別名
  • Effect of lipopolysaccharide (LPS) and peptidoglycan (PGN) on steroid production in bovine granulosa cells

抄録

【目的】分娩後、細菌感染によって起こる周産期病の一つである子宮内膜炎を発症した乳牛では、卵巣機能や子宮機能の低下が認められ受胎率が極めて悪い。その要因の一つとして感染細菌から放出されるリポポリサッカライド(LPS)やペプチドグリカン(PGN)の関与が上げられる。しかし、LPSやPGNが卵巣機能にどのように作用して卵巣機能障害を誘発しているのかについては不明のままである。そこで、本研究ではウシ顆粒層細胞のステロイド産生におけるLPSやPGNの影響について、体外培養を用いて検証した。 【方法】食肉処理場由来ウシ卵巣から小卵胞および大卵胞を分離し、各卵胞から顆粒層細胞を採集した。馴致培養後、LPSおよびPGNを培地に処理し、小卵胞由来顆粒層細胞は96時間、大卵胞由来顆粒層細胞は48時間培養した。採取した培地は、EIA法によるエストラジオール(E2)およびプロジェステロン(P4)の測定に用いた。さらに、採取した細胞からRNAを抽出し、cDNA合成後、LPS受容体(TLR4, CD14, MD2)、PGN受容体(NOD1, NOD2)、アロマターゼおよび黄体形成ホルモン受容体(LHr)の発現解析をリアルタイムPCR法にて定量解析を行った。 【結果および考察】LPSは、小卵胞由来および大卵胞由来顆粒層細胞のアロマターゼ発現およびE2産生を阻害したが、P4産生、細胞数およびLHr発現には影響しなかった。一方、PGNは大卵胞由来顆粒層細胞のアロマターゼ発現およびE2産生のみを阻害した。LPSと同様、PGNは小卵胞由来および大卵胞由来顆粒層細胞のP4産生、細胞数およびLHr発現には影響しなかった。LPSは小卵胞由来顆粒層細胞のすべてのLPS受容体発現を誘導したが、大卵胞顆粒層細胞ではTLR4の発現のみを阻害した。一方、PGNは大卵胞由来顆粒層細胞のNOD1およびNOD2の発現を誘導した。以上の結果から、感染細菌から放出されたLPSやPGNが、大卵胞顆粒層細胞のE2産生を阻害することにより、子宮内膜炎罹患牛の発情徴候の減退や卵巣機能障害を引き起こしている可能性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715947264
  • NII論文ID
    130007024315
  • DOI
    10.14882/jrds.104.0.1051.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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