黄体形成ホルモン(LH)サージ制御機構の脱雌性化に関わるエストロジェン作用部位

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タイトル別名
  • Estrogen action sites involved in defeminization of the brain function regulating luteinizing hormone (LH) secretion

抄録

[目的]哺乳類のホルモン分泌や性行動は雌雄で異なっており,このような違いは脳の性差に起因する。ラットの雌では高濃度のエストロジェンを処置すると,ポジティブフィードバックにより黄体形成ホルモン(LH)サージが誘起されるが,雄では同処置がLHサージを誘起することはない。これまでの研究より,雄では新生時期の精巣から分泌されるアンドロジェンが脳内でエストロジェンに変換されて作用し,LHサージ制御機構が消失すると考えられている。本研究は,出生直後の雌ラットを用い,LHサージ制御機構に性差をもたらすエストロジェンの脳内作用部位を同定することを目的とした。[方法]ウィスター今道系雌ラットを用い,分娩日を0日とし,生後5日に雌の新生仔に脳手術を行い,重量%で1%のエストラジオール(E2)またはコレステロールを含んだパラフィンペレットを移植し,膣開口後に毎日膣垢像を観察した。成熟後,卵巣除去をし,4日後に皮下に結晶E2を植え込み,翌日に頸静脈に採血用カニューラを挿入した。その翌日から,連続採血装置により無麻酔無拘束で1時間毎48時間の連続採血を行い,血漿中LH濃度をRIAにより測定した。採血終了後3日以内の夕刻にロードーシス観察を行い,ロードーシス商(LQ)を得た。[結果および考察]新生時期に,E2を前腹側脳室周囲核(AVPV),および視床下部腹内側核(VMH)から弓状核(ARC)の内側にかけて移植した個体では,成熟後の高E2処理によりLHサージが誘起されなかった。これらの動物の卵巣では,黄体数の減少や多数の成熟卵胞が観察された。一方コレステロール移植対照群では,高E2処理により全ての個体でLHサージが誘起された。また,実験群,対照群の全ての個体が正常雌と同程度のLQを示した。よって,LH分泌の性差をもたらす新生時期のエストロジェンの作用部位は,AVPV,VMH-ARC部位であり,さらにLH分泌の性差は性行動とは異なる機構により成立することが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205716148608
  • NII論文ID
    130007024583
  • DOI
    10.14882/jrds.99.0.89.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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