プロラクチンは卵巣顆粒膜細胞の時計遺伝子Per2の振動的な発現を低下させプロジェステロン生成を抑制する

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抄録

【目的】LHのサージ的分泌や排卵はほぼ決まった時間帯に起こることから,生殖活動においても概日時計との関係が示唆されている。概日リズムの中枢は視交叉上核であるが,卵巣でも独自の時計遺伝子の発現が報告されている。排卵に必要なLHサージはP4の生成を促すが,P4分解酵素の発現も上げる。PRLはP4分解酵素の発現を抑制するために,黄体機能の維持に必須のホルモンである一方,ストレス応答などによって慢性的に過剰分泌されると不妊になる。そこで本研究では,PRLによる生殖活動への影響を解明するために,顆粒膜細胞におけるPRLによる細胞時計への制御について解析した。【方法】Per2-dLucTGラット(23–25日齢)にeCG処理を行い,72 h後に卵巣から顆粒膜細胞を分離,FSH・FBS含有培地で1日培養後,FSH含有無血清培地(0.1%BSA,ITS含有)で2日間培養して顆粒膜細胞を成熟させた。細胞をLH及びLH+PRLで処理して,ルシフェラーゼによる生物発光をクロノスDioで測定した。比較のためLHの代わりにDXMでも細胞を同期化させた。さらに,LH処理の9.5 h後から6 h間隔の5点でmRNAを抽出し,RT-qPCRによって遺伝子発現を定量した。また,培養上清中のP4レベルをEIAにより測定した。 【結果】LH刺激による黄体細胞への分化誘導に伴ってPer2のプロモーター活性の振動が認められたが,その振動はほぼ2回の発生のあと停止した。この細胞分化の過程でPRLの添加は用量依存的(10~1000 ng/ml)に有意な振動の減少をもたらした。時計遺伝子の発現では,PRLの添加によりBmal1,Rev-erbaとDbpの発現には有意な変化は認められなかったが,Per2にのみ発現リズムの減退が認められた。DXMによる同期化でもPRLは同様の作用を示した。また,培地中のP4の濃度は,PRL添加によって有意に減少した。以上の結果から,PRLは細胞時計Per2のリズムを減退させて,P4生成を低下させることが示唆された。

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  • CRID
    1390001205716219776
  • NII論文ID
    130005051042
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or1-3.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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