マウス受精卵における能動的DNA脱メチル化機構の解明
説明
【目的】精子及び卵のゲノムは,受精を経て分化全能性を獲得する。このときゲノムワイドなDNA脱メチル化やヒストン修飾の変化などエピジェネティックなリプログラミングが引き起こされるが,詳細な分子機構は未だ不明である。これまでの研究で,母性GSEタンパク質は雄性前核の能動的DNA脱メチル化に必須であることを明らかにした (Hatanaka et al., 2013)。そこで本研究では,受精直後の能動的DNA脱メチル化の分子機構を解明すべく,母性GSEタンパク質の役割を詳細に解析した。【方法】GSEタンパク質の特徴を調べるために,アミノ酸配列のドメインを探索した。Yeast two hybrid screeningによりGSEと結合する候補因子を同定し,さらに前核期胚での相互作用も確認した。またHEK293細胞にGSE及びその結合因子を過剰発現させタンパク質を精製し,in vitroにおける酵素活性をアルギニンリッチペプチド及びH3,H4ペプチドを基質としてウェスタンブロット解析により調べた。これらタンパク質が受精直後のDNA脱メチル化に及ぼす影響を調べるために,特異的siRNA注入によるノックダウン(KD)胚およびCRISPR/Cas9により作製したノックアウト(KO)マウス胚を用いて,免疫細胞化学的解析及びLINE1ゲノム領域におけるMeDIP及びhMeDIP解析を行った。【結果】GSEはヒストンシャペロンASF1a及びASF1bとの結合に必要なHIRA Bドメインを有し,MⅡ期卵においてASF1aとの相互作用が示された。また,GSEと結合する因子としてMettl23が同定され,in vitro解析により,アルギニンメチル化酵素 (PRMT)活性を有することが確認された。KDおよびKO胚を用いた解析から,GSEとMettl23の相互作用が前核期胚のDNA脱メチル化を誘導していることが示された。本研究は,前核期DNA脱メチル化におけるヒストン修飾の関与を初めて明らかにしたものである。
収録刊行物
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- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
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日本繁殖生物学会 講演要旨集 107 (0), AW-4-AW-4, 2014
公益社団法人 日本繁殖生物学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205716405632
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- NII論文ID
- 130005474997
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可