エイジングを起こしたブタ卵のカフェイン添加によるICSI後の胚発生率の改善

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抄録

哺乳動物の卵母細胞は,雌の生体内において第一減数分裂前期後半の複糸期で静止する。この核は大きく特徴的な形態を示し卵核胞(GV)と呼ばれる。性成熟に達し黄体形成ホルモンの感作を受け,卵核胞崩壊(GVBD)が誘起され減数分裂が再開される。核相は第二減数分裂中期(M II)にまで達して,減数分裂は再び停止する。この過程を卵の成熟と呼ぶ。多くの哺乳動物において卵胞より採取した卵母細胞を体外で成熟させることができる。この成熟卵の減数分裂の静止時間の延長によって卵の形態や機能に退行が認められる変化が起こった場合を卵のエイジングと呼ばれている。エイジングの人為的制御は卵を操作する時間的制約から解放させると共に,その後の発生能力を改善でき,トランスジェニック動物,遺伝子ノックアウト動物などの作出を利用する現場において有効であると考えられる。本研究ではブタ未成熟卵の体外成熟培養中にwee1/myt1などのチロシンキナーゼの阻害作用であると考えられているCaffeineを培養液に添加し,エイジングの人為的制御を行い卵細胞質精子注入法(ICSI)後の発生率の改善を目的とした。未成熟ブタの卵巣より卵丘細胞卵子複合体(COCs)を回収し,NCSU-37を用いて48時間体外成熟培養(IVM)を行い裸化処理し,第一極体放出している卵をControl(48–)としてICSIに用いた。同様にNCSU-37において36時間IVMさせCaffeineを5mM添加した培養液で更に24時間IVMさせた卵を60+,Caffeineを添加せずに培養した卵を60–としてICSIに用いた。ICSI後38.5℃,5% CO2インキュベーター内で体外発生培養(IVC)を行い,発生能を調べた。48–,60+,60–において,それぞれの2–4細胞期胚発生率は44.6%,34.8%,32.5%で,試験区間で有意差は認められなかった(P > 0.05)。各試験区における胚盤胞形成率は12.9%,15.8%,2.8%で,48–,60+に対して60–の試験区が有意に低いことが分かった(P < 0.05)。本研究では,ブタ未成熟卵のIVMにおいて培養液にCaffeineを添加することによりICSI後の胚盤胞形成率を改善することが示唆された。

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  • CRID
    1390001205716633600
  • NII論文ID
    130005475076
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or1-19
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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