パルミチン酸はウシ卵管上皮細胞の炎症応答を惹起する

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Palmitic acid induces inflammatory responses in bovine oviduct epithelial cells

抄録

<p>【目的】血中の遊離脂肪酸(FFAs)は食生活や病気で変動し,過剰なFFAsは脂肪毒性を呈することが知られている。出産直後のウシや肥満の女性では,卵胞中のFFAs濃度が高いことがわかってきた。卵胞液中のFFAsが高濃度の場合,卵子の質や妊娠率の低下が起きる。卵胞液中のFFAsは排卵時に卵子と共に卵管に取り込まれると考えられることから,卵管の細胞が高濃度のFFAsに曝された場合,過剰な炎症状態に陥るのではないかと考えた。そこでFFAsの代表であるパルミチン酸(PA)がウシ卵管上皮細胞(OEC)の炎症応答性に与える影響について検討した。【方法・結果】食肉センターで排卵後1~3日の卵管からOECを採取,培養した。①PAを添加し24時間後に培地を回収した。PA添加によって炎症性サイトカインの1つであるインターロイキン8(IL-8)分泌が増加した。PAの受容体の一種とされているToll-Like Receptor4(TLR4)がウシOECで発現していることを蛍光免疫染色で確認した。OECにTLR4阻害剤を処理すると,PA誘導性のIL-8分泌が減少した。また,炎症によって活性化される転写因子NF-kBの阻害剤を用いたところ,PA誘導性のIL-8分泌が減少した。②OECにPAを添加すると,細胞増殖活性が低下し細胞死が誘導された。この時,PAによりOECのCaspase-3タンパク発現の増加及び活性化が促された。③炎症反応には活性酸素(ROS)が関与することが知られている。PA処理後のOECではROSの上昇がみられた。抗酸化剤を用いると,PA誘導性IL-8分泌が抑えられた。④PA処理によりオートファジーマーカーであるLC3発現の増加が蛍光免疫染色で確認され,LC3タンパク質発現も上昇したことから,PA処理がオートファジーを誘導したと考えられる。オートファジー阻害剤を処理したところ,LC3タンパク質発現及びPA誘導性IL-8が減少した。以上から,ウシOECにおいてPA添加は,TLR4-ROS-NF-kB経路やオートファジーが関与することで,IL-8を過剰に産生する炎症応答を惹起することがわかった。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205716636928
  • NII論文ID
    130007025196
  • DOI
    10.14882/jrds.109.0_or1-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ