フローサイトメトリー微生物測定装置を用いた酵母の放射線影響の解析

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タイトル別名
  • Analysis of radiation effects on yeasts with a flow-cytometry based automatic microorganism analyzer

抄録

微生物の放射線による不活化については、従来コロニー計数法や濁度測定などにより評価されてきた。しかしながら、コロニー計数法は時間と労力を要するにもかかわらず、得られる情報は‘培地にまき広げられた時点で増殖能力を有するコロニー数’のみであり、放射線照射直後の微生物の応答を定量的・定性的に評価することができなかった。微生物細胞の放射線照射効果を詳細に検討するためには照射後の微生物の増殖実態をできるだけ速く検出し、多くの情報を得ることが望まれる。全自動微生物測定装置(BACTANA)はフローサイトメトリーを原理とした測定装置であり、数分での自動測定により、生菌数、菌の状態(大きさ、長さ)などを即座に測定可能である。本研究においては微弱電子線など特殊な放射線場における微生物の挙動を調べる予備的検討として、酵母など殺滅菌の指標とされる微生物について60Coガンマ線照射直後の細胞の増殖特性、細胞膜透過性、核酸代謝の変化について検討した。界面活性剤入りの蛍光色素液を用いた場合、放射線照射直後の酵母の核酸量及びこれから算出される微生物数はほとんど変化しなかったが、線量の増加に伴って、細胞数増加の遅滞が見られた。一方核酸量は培養時間の増加に伴い上昇したが、4 kGy以上の高線量においては線量が高くなるにつれ核酸量の上昇は抑制された。この結果は、酵母の増殖が始まる前にDNAやmRNAの合成が盛んになり、放射線量の増加に伴い、これらの働きが阻害されることを示唆するものである。一方、界面活性剤を含まない蛍光染色液の場合、照射直後においても線量の増加に伴って染色数の増加が見られた。これはγ線照射によって酵母の細胞壁が損傷され、色素が細胞内部へ浸透しやすくなったためと考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205718820736
  • NII論文ID
    130007028109
  • DOI
    10.11561/aesj.2004f.0.670.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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