ギブサイトの脱水過程に現れる中間相の結晶学的研究

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  • Crystallographic Study for unknown phase of alumina on a dehydration of gibbsite.

抄録

ギブサイト(Al(OH)3)が加熱脱水によりコランダム(a-Al2O3)に変化するその過程には様々な結晶構造を有した中間相が多数出現することが知られている。特に中間相の中でも400℃から600℃付近にかけて安定に存在するγアルミナは触媒活性を有することでも知られ、その物性と結晶構造の関連に興味が持たれていたが、γアルミナの結晶性が低くX線回折ピークがブロードであることから粉末X線回折法並びにリートベルト法での結晶構造解析が困難であった。これに対し発表者らは単結晶のギブサイトを用いた加熱脱水実験により単結晶のγアルミナを得ることに成功し、これまでγアルミナと言われてきた相が結晶子のサイズの異なる2成分の混合相である可能性、またギブサイト単結晶からγアルミナ、コランダムに至るまで、酸素の最密充填面を中心とした方位関係が保たれていること等を発見した。<br>  また電気炉で加熱脱水反応を進ませた粉末試料のギブサイトに対して粉末X線回折により中間相の出現の様子を調べたところ、200℃から300℃付近で、これまで記載されていなかった新しい相(X相)が出現すること、そしてその出現量は出発試料の粒径により異なることも順次鉱物学会で報告を行ってきた。次いで本研究では、X相の出現する温度領域付近で単結晶試料を用いたX線回折測定を行うことで、このX相のキャラクタリゼーションをより詳細に行うと同時に、X相と他の中間相、特にγアルミナとの結晶学的関連性について考察することを目的に、単結晶ギブサイトと昇温ステージを用いたin- situ 単色ラウエ実験を行うことを試みた。<br>   実験はKEK PF BL4B-1に既設の微小結晶X線回折測定システムを用いて行った。昇温ステージに固定したギブサイト単結晶に対してSi(111)二結晶モノクロメータにより1.0Åに単色化されたSR光を照射し、試料を通過した回折X線をイメージングプレートにより記録することにより単色ラウエ測定を行った。測定の所要時間と同期して室温から600度まで一定間隔で昇温・保持を繰り返すことで、単結晶ギブサイトの加熱・脱水プロセスを常圧・空気雰囲気にてin-situでモニターした。<br>   実験により、粉末試料で発見されたX相は単結晶ギブサイトに対する加熱・脱水過程に於いても存在を確認されることが明らかとなった。X相はγアルミナと同様に回折点が比較的広がっており脱水初期から残存するギブサイトやベーマイトと回折点を区別することが比較的容易であった。また回折点の広がりから結晶子の大きさがγアルミナと同様に小さいことが推察され、このX相がγアルミナへの直接の前駆体である可能性も示唆された。しかしその対称性はスピネルまたは岩塩型の対称性を持つγアルミナとは異なっており、結晶学的な関連についてはさらに詳細な検討が必要であると考えられた。また、実験で観測されたX相の反射のなかには共存相と重なってしまうものも多く、これも今後の検討事項となった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205731800192
  • NII論文ID
    130007039959
  • DOI
    10.14824/kobutsu.2003.0.37.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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