天然及び合成イモゴライトの構造について

DOI
  • 小暮 敏博
    東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
  • 鈴木 正哉
    産業技術総合研究所 深部地質環境センター
  • 三留 正則
    物質・材料研究機構 物質研究所超微細構造解析グループ
  • 板東 義雄
    物質・材料研究機構 物質研究所超微細構造解析グループ

書誌事項

タイトル別名
  • On the structure of natural and synthetic imogolites

抄録

天然におけるナノチューブであるイモゴライト(imogolite)はCradwickら(1972)の提唱した構造(管状になったギブサイトシートの内側に,独立したSiO3(OH)四面体がシートの空サイトのところに配置したもの)が一般に支持されている。しかしながらはたしてイモゴライトと呼ばれる物質のすべてがこの構造をもつのか,あるいは何らかのバリエーションが存在するのかといった問題は未だ明らかではない。そこで我々は天然及び合成のイモゴライトについて主に透過電子顕微鏡(TEM)を用いてその構造を調べ,その違いを明らかにした。 <BR>  天然の試料は鳥取県倉吉市の風化軽石層から採取されたイモゴライト(愛媛大学逸見彰男先生提供),また合成試料は鈴木ら(2000)によって作製されたものを観察した。水に分散したイモゴライトをマイクログリッドに滴下してTEM観察用試料とし,TEMはJEM-2010 (200 kV)あるいはエネルギーフィルターを装着したJEM-3100FEF(300 kV)を用いた。電子回折像は主にイメージングプレート(IP)に,またTEM像は主にGatan社製のマルチスキャンカメラ(MSC)に記録した。 <BR>  イモゴライトはチューブの軸(c軸)方向にのみ約0.84 nmの周期性を持ついわゆる1次元結晶と考えられ,これをもとにまず一軸配向した場合の電子回折パターンを計算した。これよりチューブ径(Cradwickら(1972)に従い半周におけるAl八面体の数(N)で表現する)は,l = 2 の逆格子面上に現れるピーク位置から推定できることわかった。これと天然のイモゴライトの回折パターンを比較した結果,N = 10-11のチューブ径が観察されたパターンを最もよく説明した。さらにマルチスライス法によって計算されるシングルチューブのコントラスト(軸方向に平均化したもの)は,広い範囲のアンダーフォーカスの条件でシリコン位置より若干大きい半径にその極大が現れることがわかった。これよりTEM像に写ったチューブ径はN = 11程度に見積もられた。 <BR>  一方合成イモゴライトから得られる電子回折パターンはl = 2 の逆格子面上に明瞭なピークを持たず,これは従来の構造モデルでは説明することができない。またそのTEM像ではチューブのコントラストが約2.3 nmと天然のもの(約1.4 nm)に比べかなり大きく,そのチューブ径はN = 20かそれ以上と見積もられた。このことより合成されたイモゴライトは天然のものと比べその径がかなり大きく,またその構造も異なっていることが示唆された。 <BR>  尚本研究の一部は文部科学省「ナノテク支援プロジェクト」による支援と日本板硝子材料工学助成会の援助のもとに行われた。 <BR>文献 <BR>  Cradwick et al.(1972) Nature Phys. Sci., 240, 187-189. <BR>  鈴木正哉,大橋文彦,犬飼恵一,前田雅喜,渡村信治 (2000) 粘土科学,40,1-14.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205732188928
  • NII論文ID
    130007040006
  • DOI
    10.14824/kobutsu.2003.0.32.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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