緑簾石におけるCa<SUB>2</SUB>Mn<SUP>3+</SUP><SUB>3</SUB>Si<SUB>3</SUB>O<SUB>12</SUB>(OH)-成分の含有量と熱水合成条件
書誌事項
- タイトル別名
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- Effect of Ca<SUB>2</SUB>Mn<SUP>3+</SUP><SUB>3</SUB>Si<SUB>3</SUB>O<SUB>12</SUB>(OH)-component on hydrothermal synthesis of epidote
説明
緑簾石は,幅広く異なった化学組成の岩石や地質学的環境で産出する。この鉱物の安定領域の検討や結晶化学的研究のために,これまでいくつかの合成実験が行われてきた。Liou (1973)はclinozoisite成分(Cz)66.7 mol%,pistasite成分(Ps:)33.3 mol%の緑簾石を5 kb,600-700℃で,また,Giuli et al. (1999)も同様の条件でCz-Ps系緑簾石を熱水合成した。他方,Cz-Piemontite成分(Pm)系紅簾石は2 kb程度の圧力, 500-600℃の温度で合成できる(Strens, 1964; Keskinen & Liou, 1979)。Keskinen & Liou (1979)はCz66Ps17Pm17-紅簾石を1-2kbで合成した。これらのことから,Pm成分の含有量によってCz-Ps-Pm系紅簾石の合成条件が変化すると考えられる。本研究では,酸化物を出発物質とした場合のCz-Ps-Pm系紅簾石の合成条件を検討した。<br> 出発物質の組成は,(1)Cz:Ps = 2:1,(2) Cz:Ps:Pm = 2:0.9:0.1,(3) Cz:Ps:Pm = 2:0.8:0.2で,Ca炭酸塩とAl,Fe,Mn,Siの酸化物試薬を上記の比で混ぜ,900℃で30分間加熱したものを出発物質とした。酸化物混合物をAg90Pd10カプセルに過剰の水とともに封入し,それをAgカプセルにCuO-Cu2Oバッファとともに封入した。合成実験は,高圧化学製外熱式熱水合成装置を用い,500~550 ℃,2~4 kb (200~400 MPa)の温度・圧力で行った。出発物質(1)を用いた実験では,200~300 MPa,500~550 ℃の条件では,緑簾石は合成されず,種結晶を用いても緑簾石の成長は認められなかった。生成物は,アノ-サイト,赤鉄鉱あるいはマグヘマイト,アンドラダイト,クリストバライトなどであった。しかし,400 MPaでは,種結晶を用いなくても少量の緑簾石(+赤鉄鉱+アノーサイト+グロシュラー)が生成した。出発物質(2)および(3)からは,200 MPaでも300 MPaでも,500 ℃で緑簾石が生成した。21日程度の合成時間では多量のアノーサイト・赤鉄鉱,グロシュラーが伴われるが,再実験によって合成時間を延ばしてやると,緑簾石の量が増加する。出発物質(2)および(3)から,300 MPa,500 ℃,42日および45日間の実験期間で生成した緑簾石をEPMA分析したところ, 平均組成から求めたCz:Ps:Pm比がそれぞれ2.24:0.56:0.15および2.07:0.54:0.26であり,出発物質の組成よりもFeの含有量が低く,Mnの含有量が高かった。<br> 以上の結果から,Cz-Ps系緑簾石の合成においては圧力障壁が高く,500 MPa(5 kb)以上の圧力が必要であるが,Pm成分が3.3 %含まれる程度でも緑簾石の合成圧力を著しく下げることができることが分かった。天然の緑簾石には少量でもMnが含まれることが多いので,これが原因となって幅広い産状で緑簾石が産出するものと考えられる。
収録刊行物
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- 日本鉱物学会年会講演要旨集
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日本鉱物学会年会講演要旨集 2003 (0), 113-113, 2003
一般社団法人 日本鉱物科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205732235904
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- NII論文ID
- 130007040059
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可