正常表皮および炎症性・腫瘍性皮膚病変でみられるアポトーシスについて

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抄録

正常皮膚と炎症性・腫瘍性皮膚病変のアポトーシスを形態学的観察に加え,in situでの断片化DNAの検出,およびアガロースゲル電気泳動でのDNAラダーの検出によって評価した.In situのDNA断片検出には,DNAの3'-OH末端を標識する方法を用いた.その結果,(1)In situでのDNA末端標識染色の陽性率と電気泳動での低分子DNA比率には相関がみられ,共にアポトーシスの多寡を示すマーカーとなりうると考えた.ただし,断片化DNAの比率が少ない組織ではDNAラダーとしては検出できなかった.(2)正常表皮顆粒細胞に,アポトーシスに一致する形態的変化とin situでDNA断片化を認めた.この所見から,表皮ケラチノサイトは分化の最終段階でアポトーシスを起こすと考えた.(3)炎症性皮膚疾患で見られるコロイド小体は,形態学的に線維変性をきたしたケラチノサイトとその貪食処理過程であり,in situでDNA断片化を認めたことから,アポトーシスを経たケラチノサイトと考えた.(4)腫瘍性異常角化細胞(neoplastic dyskeratotic cells)は,形態学的に周辺帯やケラトヒアリン顆粒の形成という角化過程を示さず,アポトーシス細胞としての典型的な電顕的形態を示し,さらにin situでDNAの断片化を認めたことから,腫瘍性ケラチノサイトに起こったアポトーシスと考えた.(5)皮膚腫瘍でみられるアポトーシスは,増殖能とのバランスで腫瘍発育速度に関与している可能性が示唆された.

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