気流により膨張するたばこ葉脈の乾燥モデル

書誌事項

タイトル別名
  • A Drying Model of Tobacco Midrib Expanding in Air Flow

この論文をさがす

説明

シガレットの香味や硬さを設計する際,たばこ葉脈は不可欠な原料として使用される.キュアリングとよばれる特殊な乾燥によって収縮したたばこ葉脈は,加水および乾燥処理により膨張する.コスト低減に寄与する本処理技術の合理設計には,膨張の主要機構の解明が必要である.著者らは,(1)乾燥による葉脈内の水の気化,および(2)含水率および温度依存性を示す葉脈組織の応力-歪み特性の2点が,膨張に影響を与える主要因子であると考えている.そこで,機構解明の第一段階として,葉脈の乾燥特性を明らかにする.本報では,空気流および過熱水蒸気を混合した湿り空気流によって膨張するたばこ葉脈の含水率および温度を定量的に記述する乾燥モデルを示す.<br>予備検討により,長さ10 mm以上の葉脈では,半径方向の水および熱移動が主経路であると予想された.そこで,次の3つの仮定をモデルに導入し,不定形材料の乾燥現象を簡素化した:(1)たばこ葉脈は円筒形状をした均質材料である;(2)長さ10 mm以上の葉脈内の物質および熱移動は,半径方向の1次元拡散として記述される; および(3)水の蒸発は固気界面(葉脈の表面)のみで生じる. さらに,観察の結果,乾燥の初期段階で膨張はほぼ終了することから,膨張した葉脈の円相当半径を拡散長として規定した.ある気流条件では,乾燥の初期に水蒸気が葉脈表面へ凝縮する.本モデルでは,凝縮はエネルギー収支のみにより決まり,表面温度が気流の露点に達すまで継続するものとした.これら支配方程式を離散化し,Gauss–Seidel法により数値解を求めた.<br>推算の際,乾燥による膨張の有無に関わらず,頻度因子Doおよび活性化エネルギーEaをパラメータとする水の有効拡散係数DD0exp(-Ea/RT)を内部移動に適用した.ここで,RおよびTは,それぞれ気体定数および温度である.乾燥実験を行った含水率領域では,葉脈中の吸着水は結合水として存在する.そこで,膨張した葉脈を2相(たばこと水の相,およびガス相)とみなし,膨張した葉脈の有効熱伝導度をMaxwell–Euckenの式により補正した.これら有効拡散係数および熱伝導度は,各time stepおよびcontrol volumeで求めた.<br>たばこ葉から幅5±0.5 mmの葉脈を切り取り,長さ30 mmに裁断した.初期含水率の調整のため,これら葉脈片を温度 295 K・相対湿度80%で吸湿平衡にした.通気型乾燥機の電動スライダに取り付けた1本の葉脈片を気流に対して垂直に投入し,所定時間乾燥した.気流として,空気(温度 373-473 K, 混合比 0.01 kg of water/kg of dry air(kg-H2O/kg-DA)),および湿り空気(温度423, 473 K, 混合比 0.27, 2.48 kg-H2O/kg-DA)を使用し,気流速度を10から20 m/sとした.さらに,気流乾燥管の側面に設けたフッ化バリウム製の窓をとおして,放射温度計による葉脈表面温度の測定およびデジタルビデオカメラによる膨張過程の観察を行った.熱風乾燥(373 K, 1 h)により,乾燥葉脈の含水率を求めた.<br>推算値と実測値を比較すると,乾燥初期段階の表面温度にずれを生じた.この誤差は,(1)熱収支とwmax(Dubinin-Astakhov式の最大含水率)のみで水蒸気の凝縮を規定したこと,および(2)拡散長を最大半径に固定したことに起因すると考えられた.初期段階を除くと,温度および含水率の推算曲線は,それぞれの実測値にほぼ一致した.さらに,湿り空気流の場合,モデルは,乾燥初期に生じるたばこ表面への水蒸気の凝縮および凝縮熱による急激な温度上昇を記述できた.<br>以上より,本実験条件で本乾燥モデルは妥当であり,膨張するたばこ葉脈の乾燥曲線の推算に適用できるものと判断した.

収録刊行物

参考文献 (6)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ