ヴェサリウス『ファブリカ』の筋肉人図における人体表現の形態学的分析

  • 阿久津 裕彦
    順天堂大学医学部解剖学・生体構造科学講座
  • 澤井 直
    順天堂大学医学部解剖学・生体構造科学講座
  • 坂井 建雄
    順天堂大学医学部解剖学・生体構造科学講座

書誌事項

タイトル別名
  • MORPHOLOGICAL ANALYSIS OF HUMAN BODY EXPRESSION IN THE MUSCLE MAN FIGURES IN “FABRICA” OF VESALIUS
  • ヴェサリウス 『 ファブリカ 』 ノ キンニクジンズ ニ オケル ジンタイ ヒョウゲン ノ ケイタイガクテキ ブンセキ

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抄録

目的: 近代医学の出発点と目されるヴェサリウスの『ファブリカ』 (1543) における筋肉人図における人体表現の正確さを, 解剖学的な歪みおよび長さと幅の比率の2つの側面から分析し評価した. 対象および方法: 『ファブリカ』に含まれる14枚の全身筋肉人図のうち, 最浅層の筋を描いた前面, 側面, 後面の筋肉人図を分析の対象とした. 比較する対象としてはアルビヌスの『タブラエ』 (1747) における前面, 側面, 後面の最浅層の筋肉人図と骨格人図を用いた. 解剖学的な歪みを調べる第1のアプローチでは, 筋肉人図から1つずつ筋を取り除きながら内部の骨格構造を推定して画像化し, 骨格と筋を重ね合わせた図を作成し, 『ファブリカ』と『タブラエ』の間で比較検討した. 長さと幅の比率を調べる第2のアプローチでは, 体幹, 上肢, 下肢について各部の長さと比率を測定して身長に対する相対値を求め, 『ファブリカ』と『タブラエ』の間で比較検討した. 結果: 『ファブリカ』の筋肉人図から抽出した骨格は, 全体としてまとまりのある形状をしていたが, 胸郭の形状が上下両端で細い樽型, 骨盤の形状を推定を困難にするほどの筋描写の矛盾, 側面図における左下腿の異様な捻れ, 前面図における顔面描写の破綻など, いくつかの問題があった. 各部の長さと幅の測定から, 『ファブリカ』の筋肉人図はどの部位においても幅が広く描かれていたが, 特に前腕の幅が顕著に広かった. 長さについては図によって大きさが異なっており, 部位による一定の増加や減少の傾向はみられなかった. 結論: 『ファブリカ』の筋肉人図は躍動感と実在感があり, 生きている人体の観察をもとに輪郭が描かれ, そこに個々の筋の描写が加えられたと判断される. 皮下脂肪の厚さが加味されたことおよび当時の人体表現の嗜好に合わせて太く描かれたと推定される.

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