臨床技能教育の現況と今後の課題

  • 冨木 裕一
    順天堂大学医学部消化器外科学講座 (下部消化管外科学) 順天堂大学医学部医学教育研究室

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  • リンショウ ギノウ キョウイク ノ ゲンキョウ ト コンゴ ノ カダイ

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抄録

現行の医師国家試験は, 実技試験がないため医師国家試験に合格しても, 医師として必要な技能や国民から望まれる態度は十分に評価されていません. したがって, 知識だけでなく, 基本的な臨床技能やプロフェッショナルとしての人格, 態度についても段階的, 系統的に教育し, 修得させることが必要です. 臨床技能を学ぶには, シミュレーターを用いた医学教育が学習効果が高く有効です. シミュレーション医学教育は, 学生・患者に安全で, 失敗が許され, やり直しができます. 共通理解が得られているため, 手技の標準化が可能になります. また, シミュレーションでは, 症例や状況を自由に設定することで, 基本から応用まで学ぶことができます. そして, 手技に対しての評価基準を一定にすることができます. 臨床実習を開始する前の学生に対して, 「臨床実習に参加できる最低限の技能や態度が備わっているか」について評価する「共用試験」が全国の医学部・医科大学で行われています. OSCEは技能・態度の評価として用いられていますが, 知識の評価としてのCBTを合わせた共用試験の成績は, 臨床実習開始前の進級判定の資料に用いられ, OSCEは患者・国民に対する説明責任を果たす意味でも重要な試験です. すでにカナダやアメリカでは医師国家試験にOSCEが導入されており, 日本でも検討されています. 臨床技能を学ぶことは, 技術のみでなく医師としての態度を学ぶことにもなります. 医師の養成過程である卒前教育では, 知識の獲得のみに偏らない, 基本的な臨床技能とプロフェッショナリズムを有する医師を育成していくことが要求されています.

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