乳癌放射線治療の最前線

  • 唐澤 久美子
    順天堂大学医学部放射線医学講座 順天堂大学大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座
  • 伊藤 佳菜
    順天堂大学医学部放射線医学講座 順天堂大学大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座
  • 齋藤 アンネ優子
    順天堂大学医学部放射線医学講座 順天堂大学大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座
  • 廣渡 寿子
    順天堂大学医学部放射線医学講座
  • 伊沢 博美
    順天堂大学医学部放射線医学講座
  • 古谷 智久
    順天堂大学医学部放射線医学講座 順天堂大学大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座
  • 黒河 千恵
    順天堂大学大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座
  • 小澤 修一
    順天堂大学大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座

書誌事項

タイトル別名
  • ニュウガン ホウシャセン チリョウ ノ サイゼンセン

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抄録

乳癌の領域での放射線治療の適応範囲は広く, 早期乳癌に対する乳房温存療法における乳房照射, 乳房切除後の術後再発予防のための領域照射, 手術部や周囲のリンパ節の再発に対する照射, 骨転移, 脳転移などが適応である. 2008年に順天堂医院で新たに放射線治療を受けたがん患者738人中, 乳癌患者は322人で44%であった. 早期乳癌に対する乳房温存術後では, 乳房に放射線治療を行うことで, 乳房切除術と同等の治療効果があることが知られている. 腫瘍切除手術だけでは30-40%が温存乳房内再発をきたすのに対し, 乳房に放射線治療を行うことで乳房内再発を5-10%以下に減じさせることができる. 温存乳房に必要な線量を均一に照射するのは, 旧来の方法では困難で強度変調放射線治療 (IMRT) などの高精度な照射技術が必要で, 順天堂医院では2004年から強度変調を用いて治療を行っている. またそれにより, 1回の線量を増加させて短期に放射線治療を安全に施行できる短期照射法を施行して, 皮膚炎などの有害事象の軽減を認めている. 乳房切除術後では, 乳房切除した後の胸壁と鎖骨上窩に適切な放射線療法を行うことで, 局所再発の軽減と生存率の向上が知られている. この場合でも温存乳房照射と同様に線量を均一に照射する技術が重要である. 乳癌は放射線感受性が比較的高い癌で, 手術不能な局所進行癌でも, 放射線療法と薬物療法の組み合わせにより腫瘍消失が期待できる. われわれは放射線療法と組み合わせる最適な化学療法の研究を進めている. 術後の局所再発やリンパ節転移に対しても, 化学放射線療法より腫瘍制御が期待できる. また, 骨転移や脳転移の疼痛や, 神経症状の軽減にも放射線療法は有効である. このように放射線治療は乳癌治療のさまざまな場面で重要な役割を果たしており, 治療技術の向上と共に今後益々の発展が期待されている.

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参考文献 (15)*注記

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