地方性甲状腺腫の臨床病理学的研究

  • 宋 子奇
    順天堂大学医学部外科学教室 (一般外科)

書誌事項

タイトル別名
  • Clinicopathological Study of Endemic Goiter
  • チホウセイ コウジョウセンシュ ノ リンショウ ビョウリガクテキ ケンキュウ

この論文をさがす

抄録

地方性甲状腺腫は臨床, 病理学的に複雑な経過を示し, 疫学的, 病理学的発生論や治療の選択に多くの難題が残されている. 著者は本症の病期検討および妥当な病期分類がこれらの検索, 解明にきわめて有用であると着目し, 甲状腺剔出を行なった地方性甲状腺腫336例を臨床, 病理学的に精査し下記の結果をえた. 1) 地方性甲状腺腫は臨床的, 病理学的経過からStage 1;過形成期, Stage 2;腫大期, Stage 3;結節形成期と分類できた. 2) 本症は病期の進行に伴い病悩期間は長くなり, 甲状腺腫は増大し種々の局所圧迫症状をみるが, 合併症がなければ全身的, 臨床生化学的所見はほぼ正常である. 3) 臨床, 病理学的に本症はStage 1からStage 2さらにStage 3に進行し, Stage 3は終末期である. 4) 病変の占居部位はStage 1では両葉性, Stage 2では両葉性と単葉性がほぼ等しく, Stage 3では単葉性が多い点からもStageの進行度を裏付けられる. 5) 336例のうち男性39例, 女性297例, 男女比1:7.6で, 発生のピークは女性では20才から30才代, 男性は30才から40才代であった. 6) 手術適応例は若年者より成人に多く, 女性は男性より著しく多い. ヨード治療の効果が若年者ほど良好で, 男性は女性よりもヨード感受性が高いためである. 7) Stage 3の9.4%に甲状腺機能亢進症 (4.03%), 腺腫 (1.34%), 甲状腺癌 (4.03%) などの共存疾患がみられた. 8) ヨード治療はStage 1では効果的であるがStage 2では無効でStage 3に進行し, 種々の合併症を起こすこともあり, Stage 2における手術が望ましい.

収録刊行物

参考文献 (1)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ