イタリアンライグラス(Lolium multiflorum LAM.)を中心としたLolium属品種・系統の耐湿性の評価

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タイトル別名
  • Evaluation of Wet Endurance of Genus Lolium
  • イタリアンライグラス Lolium multiflorum Lam.オ チュウ

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抄録

本報告では,イタリアンライグラス(Lolium miぷiflorum LAM.)の耐湿性品種育成を効率よく行うための選抜法に関する基礎的知見を得るため,以下の4試験を実施した。1.主成分分析による耐湿性の評価(試験1):Lolium属4種17品種・系統,ペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)との種間雑種(L. hybridum)の1品種及びFestuca属との属間雑種(Festuca一Lolium hybrid)の2品種の計20品種・系統の幼苗を2週間湛水処理し,得られた9形質のデータより主成分分析を実施した。その結果,第1主成分が耐湿性を示し,各品種・系統のスコアとライシメータでの湛水処理後の乾物重との間には,高い相関関係が認められことから,第1主成分スコアに基づき耐湿性の評価が行えることが明らかとなった。2.発根程度を指標とした簡易評価法(試験2):湿害からの形態的回避と考えられる地表面への発根程度と第1主成分スコアとの間には,高い相関関係が認められた。また発根程度は,湛水処理後の根の上層部相対乾物重と高い相関関係を示したことから,これを耐湿性の指標として簡易に評価が行えることが明らかとなった。3.湛水処理による根の通導組織の変化(試験3):湛水処理による根の通導組織の発達程度は,主成分分析における第1主成分スコアの大小と類似した傾向を示し,耐湿性を高める一要因と考えられる。4.アルコール脱水素酵素(ADH)アイソザイムの変化(試験4):無処理区において移動度の異なる5本のバンドが観察された。一方,湛水処理することにより,それらより分子量の低い2本のパンドが新たに検出され,ADHアイソザイムの質的変化が観察された。これは湛水処理による嫌気状態への適応反応に関するものであり,耐湿性に関する生理的耐性のメカニズムを解明する上での有用な情報と考えられる。

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