トウモロコシの子実成熟過程にともなうフィチン酸およびリン酸化合物の変動

  • 実岡 寛文
    広島大学大学院生物圈科学研究科環境循環系制御学専攻
  • 本田 直樹
    現住所宮崎大学農学部附属自然共生フィールド科学教育研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in Phytic Acid-P and Phosphorus Compounds with the Maturity of Maize Grain

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抄録

トウモロコシを始めダイズ, エン麦など穀実に含まれるリン(P)の内, 60%以上がフィチン態リン酸(フィチン態P)である。本実験では, トウモロコシ(品種パイオニア95)を圃場栽培し, 絹糸抽出4日前, 絹糸抽出期, 乳熟期(絹糸抽出10日目), 黄熟期(絹糸抽出21日目), 完熟期(絹糸抽出43日目)の各時期の植物体のP量と子実の無機態P, フィチン態P, 細胞構成P, フィチン態P以外の有機態P濃度の変動を調査し, フィチン態Pが種子成熟過程のどの時期に集積するのかを解析した。 植物のP吸収量は, 子実の成熟とともに増加した。絹糸抽出期前と抽出期に吸収したPの90%近くが稈および葉に分配されたのに対し, 子実成熟期には程および葉へのP分配率が減少し, 逆に子実へP分配率が上昇した。絹糸抽出4日前の子実の乾物当たりのP濃度は6.12 g Pkg^<-1>であったが, 絹糸抽出期に4.08, 乳熟期に3.00, 黄熟期に1.95, 完熟期に1.83 g Pkg^<-1>となり, 子実の成熟にともなって子実P濃度は減少した。全P濃度に対する細胞構成Pおよび有機態P濃度の割合は, 絹糸抽出4日前と絹糸抽出期に80-90%と高かったのに対して, 無機態Pおよびフィチン態Pの割合は低かった。しかし, 子実の成熟にともなって細胞構成Pおよび有機態Pの割合は急速に減少し, 逆に無機態Pおよびフィチン態Pの割合が増加した。乳熟期, 黄熟期および完熟期の全P濃度に対する無機態Pの割合は, 21.7, 7.3および6.3%であり, それに対してフィチン態P濃度の割合は, それぞれ6.3, 42.2, 75.8%であった。以上の結果, 子実が未成熟な時期, すなわち子実成熟初期には, 細胞構成成分およびフィチン以外の有機物の合成が盛んであるのに対して, 子実の成熟時期, すなわち黄熟期以降フィチン酸の合成が促進されることが示唆された。

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