落葉広葉樹伐採跡地におけるシバ・オーチャードグラス型草地の成立過程に関する生態学的研究 : II.シバ(Zoysia japonica STEUD),オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)および数草種を表面播種した混播草地の植生変化に及ぼす施肥の影響

書誌事項

タイトル別名
  • Ecological Studies on Establishment and Development of Zoysia japonica STEUD. -Dactylis glomerata L. Association from Cut-over Land of Deciduous Broad-leaved Forest : II. Effect of fertilization on vegetation changes in the pasture established by the oversowing of Z. japonica, D. glomerata and several weed species
  • 落葉広葉樹伐採跡地におけるシバ・オーチャードグラス型草地の成立過程に関する生態学的研究-2-シバ(Zoysia japonica Steud),オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)および数草種を表面播種した混播草地の植生変化に及ぼす施肥の影響
  • ラクヨウ コウヨウジュ バッサイ アトチ ニ オケル シバ オーチャードグラス

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抄録

落葉広葉樹伐採跡地を対象として,シバ・オーチャードグラス型草地を不耕起造成する方法を生態学的見地から検討した。本試験では,造成時における施肥量を変えて多,少および無肥区を設け,シバおよびオーチャードグラス(Or)ならびに二次遷移系列の指標種となるススキおよび1年生植物5種の種子を混合し,それらを1980年9月に表面播種した。各区は1牧区とし,播種翌年から5年間にわたり毎年ほぼ一定の強度で放牧利用した。なお,放牧利用5年間の各区における毎年の追肥は,造成時の施肥処理と対応させて,それぞれ多,少および無肥とした。1)無肥区では放牧利用4年目までOrが優占種であった。しかし,5年目にはOrの積算優占度(SDR_2)が低下した。これに対して,シバおよびススキのSDR_2は経年的に増加を続け,5年目にはOr,シバ,ススキでSDR_2上位グループを構成した。2)少および多肥区では,5年間を通じてOrが後占種であった。また,シバおよびススキは,少肥区では5年間を通じてSDR_2下位グループにとどまり,多肥区では2年目以降,両草種とも消失した。3)混播した各1年生植物における利用1年目のSDR_2は無肥区ではキンエノコロとヒメイヌビエ,少肥区ではヒメムカシヨモギ,多肥区ではシロザとヒメムカシヨモギがそれぞれ高かった。4)各区とも経年的に,広義の地上植物(Epigeal)のSDR_2が減少し,地下植物(Hypogeal)のSDR_2が増加した。こうした各区における休眠型組成の経年変化は,施肥処理と無関係で,放牧利用の継続による影響と考えられた。しかし,1年生植物のSDR_2は無および多肥区で経年的に減少しだのに対し,少肥区では5年間を通じて一定の植を維持した。5)出現種数および優占度-種順位関係に基づく種の多様性は,少肥区において5年間を通じて高い水準で安定維持された。しかし,無および多肥区では経年的に低下し,特に多肥区では低下が著しかった。6)これらの結果から,シバ・オーチャードグラス型草地は本試験条件では無肥区で成立し,成立過程における指標植物は利用初期ではキンエノコロとヒメイヌビエであり,その後はススキであることが明らかとなった。また,無肥区で成立したシバ・オーチャードグラス型草地における両草種の混生割合を長年にわたり維持するための施肥管理法として,少肥区より少ない追肥が有効であると考察した。

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