胃開放性潰瘍を伴う病変の良悪性鑑別診断―特に診断困難例の検討―

DOI オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Endoscopic Study of Differential Diagnosis between Benign Ulcers and Malignancies with Open Ulcers of the Stomach

この論文をさがす

説明

1992年7月から1995年7月までの間に,上部消化管内視鏡検査を施行した5,594例9,329件中,非上皮性腫瘍を除き,開放性潰瘍を伴い生検を施行した症例は550例である。これらのうち,初回時内視鏡診断と組織診断の相違をみた20例を対象として,それらの内視鏡像を検討し,内視鏡診断における問題点を明らかにした。内訳は偽陽性例6例(2.0%),偽陰性例14例(5.6%)であった。偽陰性例の14例中10例(71%)がⅡc+Ⅲであり,偽陽性例は6例中5例(83%)が初回時内視鏡診断では進行癌と診断されたものであった。また偽陰性例の組織型は分化型腺癌8例,未分化型腺癌6例であった。偽陽性例6例中3例(50%),偽陰性例14例中8例(57%)が再検討時には正診可能であった。しかしながら,偽陽性例のうち辺縁の一部が不整な巨大潰瘍の1例,集中するひだ先端の変化に先細り,段差を認めた1例,および周囲に多彩なびらん発赤を伴う多発潰瘍の1例の3例は見直し診断でも正診不可能であった。偽陰性例では,幽門前部で観察困難であった1例および悪性所見の指標に乏しい5例では,見直し診断においても正診不可能であった。すなわち9例(全体の1.6%)は内視鏡的には良悪性の鑑別が困難であった。開放性潰瘍を伴う病変では,色素散布併用による注意深い観察に加えて,抗潰瘍剤の投与後の生検を含めた再検査,経過観察が必要であると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ