セイヨウナシ果実の樹上完熟を阻害する要因

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  • Inhibitory Factors That Affect the Ripening of Pear Fruit on the Tree

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抄録

一般にセイヨウナシ果実は樹上で完熟しない.そのため,収穫適期に果実を採取し,追熟する必要がある.本研究では,セイヨウナシ果実の樹上完熟を妨げる要因について検討した.最初に‘バートレット’果実を供試して,樹上におけるエチレン生成と果実離脱との関係を調べた.収穫適期の果実はエチレン生成量がきわめて少なかったものの,その後,果実が離脱する 2,3 日前にエチレン生成量が急激に増大した.果実の離脱は,エチレン処理によって促進され,逆に,1-メチルシクロプロペン処理によって抑制された.次に,収穫適期以降も続く師部輸送を介した果実への同化産物の供給が,果実の成熟にどのような影響をおよぼすか調査した.師部輸送を阻害するために,果実の離層近傍の枝に環状剥皮処理を施した.その結果,環状剥皮処理によって果実の成熟が促進されたものの,可食状態に達する前に離脱した.離層への 1-ナフタレン酢酸(NAA)処理は果実の離脱を抑制するのに効果的であった.ただし,NAA 単独処理は果実の樹上成熟を促進しなかった.一方,NAA と環状剥皮の併用処理により,果実は樹上においても完熟した.以上の結果より,セイヨウナシ果実が樹上で完熟しない要因として 2 つのことが考えられた.1 つは,収穫適期以降,樹上において果実自体によって生成されるエチレンであり,もう 1 つは師部輸送によって果実へ流入する同化産物である.

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