海外現地法人におけるローカルスタッフの日本人派遣者に対する評価 : 中国におけるデータから

  • 韓 敏恒
    早稲田大学経済学研究科博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • A study on the evaluation of Japanese expatriates from the view point of local employees : the case of Japanese overseas subsidiaries in China
  • カイガイ ゲンチ ホウジン ニ オケル ローカルスタッフ ノ ニホンジン ハケンシャ ニ タイスル ヒョウカ : チュウゴク ニ オケル データ カラ

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抄録

本研究は在中国日系企業の日本人派遣者の職務成果、ならびに能力、行動について、ローカルスタッフである部下がどのように評価しているかを明らかにするものである。調査は中国の沿海地域で操業する日系企業39社で働くローカルスタッフを対象に、彼らに自分の直属上司である日本人派遣者ならびにローカル管理職を評価してもらうことにより行われた。サンプル数は合わせて1,110に達する。分析では、まず課題1として、今まで実証研究が十分行われなかった日本人派遣者の職務成果に焦点を当て、企業の組織要因による影響を考慮に入れながら、職務成果に影響を及ぼす要因を探るための重回帰分析を行った。その結果、トップマネジメントとミドルマネジメン間に職位別差異が見られた。また、分析で得られた6つの能力、行動に関する要因(「対人関係能力」、「業務遂行能力」、「情報発信力」、「組織責任感」、「開放的志向(open-mindedness)」、「現地事情理解度」)については、ミドルマネジメントの職務成果にすべて正の影響を持つが、トップマネジメントの場合、「情報発信力」と「現地事情理解度」を除く4つの能力、行動について正の影響を持つという結果を得た。課題2として、日本人派遣者の能力、行動に対するローカルスタッフの評価を考察するため、同ランクのローカル管理職に対する評価との比較のためのt-検定を行った。その結果、日本人派遣者の「組織責任感」については、職位に関わらず高く評価されているが、一方でミドルマネジメントの「開放的志向(open-mindedness)」については、非常に低くしか評価されていないことが分かった。最後に課題3として、日本人派遣者の能力、行動に対するローカルスタッフの評価について、業種間における差異を確認するため、製造業・非製造業間のt-検定を行った。その結果、非製造業におけるトップマネジメントの「現地事情理解度」が低くしか評価されていないこと、そして製造業におけるミドルマネジメントについては、「業務遂行能力」は高く評価されているが、逆に「開放的志向(open-mindedness)」については、低くしか評価されていないことが分かった。日本人派遣者である上司の能力、行動が自分自身の職務成果に直接関連するのみならず、現地人部下のモチベーションと職務成果にも直接関係すると考えられるため、在中国日系企業で働くローカルスタッフの日本人派遣者に対する評価を明らかにし、その上、職務成果達成に影響を及ぼす要因を究明することで、今後の効果的な海外派遣に資することを期待している。

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