外航海運業の船員戦略における知識移転

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タイトル別名
  • Knowledge Transfer in the Seafare Strategy of International Maritime Industry
  • ガイコウ カイウンギョウ ノ センイン センリャク ニ オケル チシキ イテン

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抄録

本稿は、外航海運企業の船員戦略における船員の能力開発を、国境を越えた「知識移転」として捉え、それが成功裏に行われるための要件を仮説として提起することを目的とする。本稿では第1に、船員戦略における「知識」および「知識移転」の具体的な概念を明確にする。第2に、インタビュー調査とオペレーション現場の参与観察に基づいて、日本の大手海運企業による知識移転の事例を検討し、知識移転の方法と課題を検討する。第3に、上述の事例を踏まえ、知識移転に関する理論的フレームワークを援用し、成功裏に知識移転を行うための要件について、仮説を提起する。その結果、船員戦略における知識を形式知的要素と暗黙知的要素とに区分し、それぞれの観点から、効率的な知識移転が行われるための仮説を提起した。形式知的要素の移転に関しては、以下の3点が挙げられる。すなわち第1に、体系的なトレーニングプログラムを整備することによって、知識の粘着性と模倣される可能性が低下するだけでなく、船員個人と海運企業の吸収能力が増大する。第2に、契約ベースの船員を継続的に雇用することによって、船員の知識移転に対するモチベーションが増大し、知識の全社的標準化が促進される。第3に、適切な監査制度を構築・実施することによって、知識の全社的標準化が達成されると同時に、新たな知識ニーズが発見され、それが知識創造・移転プロセスにフィードバックされる。他方、暗黙知的要素の移転に関しては、以下の2点を提起した。すなわち第1に、適切なマンニングとクルーイングによって、オペレーション現場でのコミュニケーションが活発に生起し、暗黙知的要素の移転が積極的に行われる。第2に、オペレーション現場でのトレーニング手法を形式知化すると同時に、能力開発に対する船員の評価制度を確立することによって、個人的なバイアスによる受領者の不利益を回避し、知識の全社的標準化が可能となる。

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参考文献 (16)*注記

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