国家特殊的優位が国際競争力に与える影響 : 半導体産業における投資優遇税制の事例

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  • The Effect of Country-specific Advantages on Global Competiveness : A Case Study on Taxation for Semiconductor in Dustries
  • コッカ トクシュテキ ユウイ ガ コクサイ キョウソウリョク ニ アタエル エイキョウ ハンドウタイ サンギョウ ニ オケル トウシ ユウグウ ゼイセイ ノ ジレイ

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抄録

本研究では企業の国際競争力を企業特殊的優位と国家特殊的優位の2つから説明するフレームワークを採用し、近年新しい国家特殊優位として浮上している投資優遇税制の影響について検証した。国家特殊的優位は、天然資源などの経済的要因、政府的要因などから構成される。企業は国家特殊的優位という環境の下で能力蓄積を行い、国際競争力を獲得する。また産業がもつアーキテクチャも企業の能力蓄積に影響を与える。近年の半導体産業では設備投資の高騰が進み、投資優遇税制が大きな影響力を持っているといわれている。さらに最先端装置価格の高騰がすすむにつれて装置仕様の業界標準化、すなわちアーキテクチャのオープン化がなされ、生産ノウハウを内蔵し標準インターフェイスを持った生産装置が市場取引される事態が起こっている。このような状況の中で、税制優遇によって生み出された営業キャッシュフローを基盤として最先端設備に投資することが企業の製造能力を高め、国際競争力を高めることを促している。しかし各国で施策されている税制優遇について比較した研究は少なく、どのような施策がとられ、その効果がどの程度のものであるのかについて明らかにされていない。本研究では、韓国・台湾・日本の税制度を比較・整理し、各国税制の違いに由来する営業キャッシュフロー差が各企業の設備投資額のどの程度にあたるのかを推定した。その結果、韓国・台湾と日本では税制度差に由来のキャッシュフロー差が約1,300〜2,700億弱円/年程度発生しており、工場投資額が高騰した1999-2001年を境界として設備投資額に対する制度由来のキャッシュフロー差の比率が大きくなっていることが明らかになった。投資優遇税制という国家特殊的優位によって営業キャッシュフロー差が生じ、そのことが韓国・台湾半導体産業の旺盛な投資行動につながっており、新興国の半導体産業の躍進の一因となっていると考えられる。半導体産業に限らず、巨額な生産設備投資が必要な産業、例えば液晶パネル産業や太陽光発電産業などは、このような制度的な要因を大きく受ける。よって、本研究の結論は、理論・実務上、大きなインプリケーションがあるとともに、企業のビジネスモデル構築にも大きな意味を持つものと考えられる。

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