海外からの帰任過程における問題とその支援 : 日系大手多国籍企業の帰任者への調査から

  • 内藤 陽子
    北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程

書誌事項

タイトル別名
  • Issues of International Repatriation and Organizational Support : A Study of Repatriates at Large Japanese Multinational Corporations
  • カイガイ カラ ノ キニン カテイ ニ オケル モンダイ ト ソノ シエン ニッケイ オオテ タコクセキ キギョウ ノ キニンシャ エ ノ チョウサ カラ

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説明

本研究は、海外勤務サイクルの中で、あまり注目されていない海外赴任後の帰任過程に着目し、帰任者の帰国後における円滑な再適応を妨げるとされる諸問題を明らかにすること、および海外勤務に伴う異動過程をより円滑にする帰任者支援の枠組みを提言すること、を目的とする。その目的を達成するために、日系大手多国籍企業の帰任者を対象とする質問紙調査を実施し、帰任者が直面する問題を「認知的ギャップ」および「帰任時の困難さ」という2つの分析視角にもとづいて検討した。帰任者により記述された回答は、アフター・コーディングによって設定した項目ごとに分類し、集計を行った。その結果、先行研究では指摘されていない諸問題が明らかになった。「認知的ギャップ」においては、本国の組織・仕事および生活環境の変化に関する記述がほとんどを占めた。「帰任時の困難さ」においては、仕事に関する情報提供などのフォローの不足、新住居の選定問題、子供や配偶者に関する問題についての記述が多数見られた。これらの分析結果から、帰任者は新たに所属する組織事情の把握、新業務の習得および生活基盤の確立など、短期間に多くの課題に直面するので、それを解決するには組織的かつ効果的な帰任者支援が不可欠であることが示された。以上を踏まえ、帰任者の「認知的ギャップ」および「帰任時の困難さ」を軽減させるための帰任者支援の枠組みとして、帰任者への情報提供、周囲の人たちによる理解と配慮、組織における処遇と制度の整備の3つを導いた。

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被引用文献 (1)*注記

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