医療機関における管理会計システムとミドルマネジメントの調整

書誌事項

タイトル別名
  • Management Accounting and Coordination by Middle Management’s Coordination in Health Care Organizations
  • 医療機関における管理会計システムとミドルマネジメントの調整 : ミドルマネジメントの組織内調整に関する文献レビュー
  • イリョウ キカン ニ オケル カンリ カイケイ システム ト ミドルマネジメント ノ チョウセイ : ミドルマネジメント ノ ソシキ ナイ チョウセイ ニ カンスル ブンケン レビュー
  • ミドルマネジメントの組織内調整に関する文献レビュー
  • A Literature Review

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抄録

本稿の目的は,医療機関におけるミドルマネジメントが,トップマネジメントと現場の間に立ち,どのように管理会計システムを利用することによって組織内調整を行っているのかを文献レビューにより検討することである。これまで医療機関では,NPM(New Public Management)の中で管理会計システムの導入が試みられてきた。しかし,先行研究では管理会計システムの導入と,それによる組織変化に対する現場の医療専門職の反応として,抵抗と受容という2 つの反応が見られてきたことが示されてきた。 本稿では,目標一致を図るために重要な要因として組織内調整におけるミドルマネジメントの役割に焦点を当てている。医療機関のミドルマネジメントの役割には「吸収役」と「双方向の窓」という2 つがあるといわれている。前者は,現場の活動が機能することを第1 に考え,トップマネジメントの提示する会計情報が現場の活動に影響を及ぼさないよう吸収する役割である。後者は,従来,医療機関以外でも指摘されてきたように,トップマネジメントが示す会計情報を翻訳し現場に伝達する一方で,現場の意見を集約し,それをトップマネジメントに反映させる役割である。 本稿では,ミドルマネジメントのこれら2 つの役割に焦点を当て,ミドルマネジメントによる組織内調整について文献レビューを行った。文献レビューの結果,第1 に,ミドルマネジメントは専門職や管理者など複数のアカウンタビリティが求められる中で,それぞれの場面に合わせて吸収役あるいは双方向の窓としての役割を果たすのかを決め,組織内の役割期待に関する秩序をコントロールする役割があるという知見が得られた。第2 に,ミドルマネジメントがどのように管理会計システムを利用し吸収役としての役割を維持しているのかという点と,ミドルマネジメントが現場の情報を集約しトップへ伝達する際,その情報の一部をトップに伝えず吸収するという点については未だそのプロセスが明らかになっていないことを今後の研究課題として指摘している。本稿は,ミドルマネジメントによる組織内の調整行動が未だ明らかにされていない点を指摘し今後の研究へつながる検討課題を示している点で重要な貢献があるといえよう。

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