ヴァーチャルな自己の存在―探偵小説から見る情報社会―

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書誌事項

タイトル別名
  • The existence of virtual self - Information society considered from a detective story -

抄録

<p>本研究は, サイバースペースをより魅惑的な場にすることを目的とし, そのためのヴィジョンを提示したものである。現在においてサイバースペースの問題を論じるにあたり, ビッグデータの問題は避けて通れない。しかしながらこの論点は, 主に技術的な観点からのみ扱われてしまっている。サイバースペースにおいて操作を行うのは, まさに我々なのにである。そこでWalter Benjaminの議論を参照することにより, 本論ではこの問題を我々の存在に引き付けて論じた。その際の一つの参照点として探偵小説の構造に着目し, それとサイバースペースを比較検討した。探偵が用いる痕跡の繋ぎ合わせの手法をノードの結合からなるリンク構造のアナロジーとして考察することにより, その類似を指摘しつつも, 近代的な探偵的手法をそのままサイバースペースへと転用することの限界を示した。</p><p>そして, 情報の哲学を打ち立てようとしているPierre Lévyの議論を参照することにより, この議論を現代的な問題へと接続した。ここにおいてビッグデータのあり方を踏まえた上での, サイバースペースにおけるヴァーチャルな自己の存在(我々の複製としての)が素描されることになる。この存在は探偵や群衆ではなく, Benjaminの議論における遊歩者がモティーフとなっている。サイバースペースをビッグデータから構成されるヴァーチャルな自己が遊歩する空間として捉え, これを我々の経験や創造性から論じている点が, サイバースペースの今後を考察する際に有用な立脚点となる。</p>

収録刊行物

  • 社会情報学

    社会情報学 4 (1), 73-89, 2015

    一般社団法人 社会情報学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205773640576
  • NII論文ID
    130005304020
  • DOI
    10.14836/ssi.4.1_73
  • ISSN
    24322148
    21872775
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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