美登利私考 : 悪場所の少女

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タイトル別名
  • A Consideration on Midori : A Girl in the Bad Place
  • ミドリシコウ アクバショ ノ ショウジョ

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抄録

近年、美登利の変貌をめぐって論争が行われるなど『たけくらべ』の読みが活性化している。本稿は物語の焦点ともいうべき美登利という少女の時空を、「吉原」という悪場所との関連から構造的に捉えようとしたものである。構成としては(序を入れて)五章から成り論考には小見出しを付けなかったので記すと以下のようである。「はじめに」は「悪場所の少女」という副題の説明であり、本稿が「悪場所なるもの」と「少女なるもの」の二つの視点からの立論であることを述べている。「一」は「少女の時空」で、美登利という少女の生きる場である「吉原」が近世以来どのような場所としてイメージされ、さらにそれが近代以降どのように変容・継承されたかを論じ、美登利の「少女の時」が実に危い時間のなかで支えられていることを検証した。「二」は「いじめのディスクール」で、美登利の「少女の時」に翳が射すのは夏祭の喧嘩の場面からであり、とりわけ長吉の放った言葉が美登利の深層に強い作用を及したことを考察した。「三」は「少年たちのネットワーク」で、大音寺前の少年たちが美登利という「たったひとりのよそ者」にたいし、無意識のうちに演じてしまった「神殺し」の役割を論じた。「四」は「島田髷の意味するもの」で物語の構造との関連から、いわば美登利変貌論争の整理を試みたものである。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 36 (6), 11-24, 1987

    日本文学協会

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