『元亨釈書』と『高山寺明恵上人行状』 : 『元亨釈書』が省略した記事を中心に

書誌事項

タイトル別名
  • From Kozanji-myoe-shonin-gyojo to Genkosakusho : An Eliminated Episode of the Source Book
  • ゲンコウサクショ ト コウザンジ ミョウエ ショウニン ギョウジョウ ゲンコウサクショ ガ ショウリャク シタ キジ オ チュウシン ニ

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説明

『元亨釈書』に典拠が『高山寺明恵上人行状』(『漢文行状』)である明恵伝が載録されている。『元亨釈書』の記述順序は概ね、『漢文行状』に拠っている。しかし、一箇所改編された箇所がある。改編の意図については、下間一頼の論稿がある。それは虎関に「明恵の行った禅定を臨済禅に引き付けてしまおうとの意識」を読み取るものである。しかし、虎関の改編は明恵と華厳学、特に、法蔵の学問との関係を強調することにあった。即ち、禅僧虎関は明恵を華厳僧と見ていたのである。故に、鈴木大拙が虎関を我が国最初の『楞伽経』の研究者と評しているが、虎関が重視したのは四巻『楞伽経』(『楞伽阿跋多羅宝経』)であり、七巻『楞伽経』(『大乗入楞伽経』)羅婆那夜叉説話を中心に修業した明恵は、あくまでも禅書に関心を示す華厳僧であった。虎関が『漢文行状』に記された『楞伽経』の記事を引用しなかった理由はここに存していたのである。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 55 (2), 1-8, 2006

    日本文学協会

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