解かれた女を読み替える : 飛浩隆『ラギッド・ガール』とその周辺(<特集>日本文学協会第62回大会二日目文学研究の部 <文学>の黄泉がえり)

書誌事項

タイトル別名
  • Re-coding a Decoded Girl : Female Body in Hirotaka Tobi's Rugged Girl(<Special Issue>The 62nd JLA Conference (2nd Day): Reincarnation of Literature)
  • 解かれた女を読み替える--飛浩隆『ラギッド・ガール』とその周辺
  • トカレタ オンナ オ ヨミカエル トビ ヒロタカ ラギッド ガール ト ソノ シュウヘン

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抄録

飛浩隆「ラギッド・ガール」(<SFマガジン>二〇〇四年二月号に掲載)は、ある事情で放置されている仮想現実世界を扱った<廃園の天使シリーズ>の中編である。仮想現実世界は、<数値海岸(コスタ・デル・ヌメロ)>といい、<廃園の天使シリーズ>は、その創造と放棄と内部変化を描いている。もちろん仮想現実世界といっても、現実世界はあまりにも膨大なデータであるために、現実をそっくり写しとれるわけではなく、いわば仮設の情報集積所となっており、人間の似姿と人工知能が混在する世界として想定されており、インターネットに近い感触を持つ。「ラギッド・ガール」の「ラギッド」とは「ざらざらの」という意味。主要登場人物である安形渓の身体の異形を指している。物語は、体験や記憶がすべて体内に蓄えられながら生きる情報集積体たる渓の身体論を中心に、アガサとキャリバン、安奈と渓の関係を読み解きながら、現実世界、仮想現実世界、さらに仮想現実世界に内蔵されたサイバースペースという三つの空間にまたがって、性差とセクシュアリティの諸問題を投げかけ、人と人とのコミュニケーションについての問題を探求していく。この作品における女性の身体と性差の設定は、アメリカのSF作家ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの「接続された女」を彷彿とさせ、共通点が多い。特筆すべき要素は、女性身体をめぐる話題、「身体の醜さ」、「暴力」、「レズビアン・セクシュアリティ」である。そこで、本稿では、電脳空間を素材にしたサイバーパンク小説の先駆けと評される「接続された女」と、ポスト・サイバーパンク小説「ラギッド・ガール」を比較検討し、女性性、身体性、情報集積体としての性差について再考する。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 57 (4), 24-34, 2008

    日本文学協会

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