佐藤春夫における短編「砧」の問題 : 熊野および春夫父子の「大塩事件」と「大逆事件」とをつなぐ心性

書誌事項

タイトル別名
  • Son, Father, and the Two Treasons : Memory, Desire, and Communion in Haruo Sato's "Kinuta"
  • サトウ ハルオ ニ オケル タンペン キヌタ ノ モンダイ クマノ オヨビ ハルオ フシ ノ オオシオ ジケン ト タイギャク ジケン ト オ ツナグ シンセイ

この論文をさがす

抄録

佐藤春夫の短編「砧」-そこで語られる「革命家」の話や、一族のものにも影響を与えた幕末の「大塩事件」の後遺症は、語られない「大逆事件」へと結びついてゆくように思われる。父豊太郎から子春夫へと語られる一族の話、家督相続の実情、そこには語られない「大逆事件」の残像を引きずっているように思われる。「大塩事件」と「大逆事件」とを重ね合わせる心性は在所下里、あるいは懸泉堂の「共同幻想」のようなもものとしても内在していたのではないだろうか。「砧」は、「大逆事件」について、一言も語られていないものの、当事件が豊太郎・春夫父子の意識下に与えた影響を、十二分に推測させる作品である。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 53 (9), 24-35, 2004

    日本文学協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ