立松和平「海の命」を読む

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タイトル別名
  • Reading Wahei Tatematsu's "Umi-no-inochi"
  • タテマツ ワヘイ ウミ ノ イノチ オ ヨム

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抄録

小学校六年国語教材「海の命」は、教師用指導書や実践報告等を見る限り、父を殺された太一が、「父を破った瀬の主」を捕らえ父を乗り越えようとするものの、瀬の主を「海の命」と見ることで認識を転換し、共生を選ぶ物語として教授されているようである。しかし、太一から殺意が感じられず、瀬の主への恨みも読み取れないこと、太一の出会ったのが「父を破った瀬の主」かどうか確定できないことなどから、そもそもこの小説は復讐譚的枠組みとは無縁であると考えられる。作品に突然の転回をもたらしたのは、太一がそれまで抱いてきた瀬の主への憧憬であり、海への畏敬の念であった。「海の命」は、与吉じいさの後継者としての太一の生が描かれた作品である。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 54 (9), 52-60, 2005

    日本文学協会

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