教室で読む「猫の事務所」 : 「半分同感」の意味(<特集>日本文学協会第65回大会(第一日目) <文脈>を掘り起こす-ポスト・ポストモダンと文学教育の課題)

書誌事項

タイトル別名
  • Reading "Neko-no-jimusho" in Class : The Meaning of Its "Semi-Sympathetic" Narration(<Special Issue>The 65th JLA Conference (1st Day): Unearthing "Contexts": Literary Education and Postmodernism)
  • 教室で読む「猫の事務所」--「半分同感」の意味
  • キョウシツ デ ヨム ネコ ノ ジムショ ハンブン ドウカン ノ イミ

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説明

子ども達の読みは、かま猫への同情から出発し、「あたりまえの猫」達のかま猫に対する羨望や嫉妬、事務所に渦巻く欲望、事務長の策謀等を明らかにし、猫社会の差別構造を捉えた。獅子の裁きを受けて、新たな事務所の構成を考えてみたが妙案は浮かばない。猫社会に生きる猫達みんなの生き難さを実感したことは、獅子が個々の相対的な関係を超えて事務所ごと廃止させた意味を受け止めたと言えよう。「猫の事務所」を教室で読んだことは、生活の中のさまざまな感情を吐露し、他者の苦しみと自分とを繋げることを後押ししたと考える。子ども達はみんなの幸せを願っていた。その思いが語り手から導かれていることを掘り起こすことは、届かなかった。時空を超えたはるか彼方から、猫達を慈悲深く見守っている語り手は、獅子の英断に賛成した上で、「半分」によって猫社会の救済を示したのであろう。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 60 (3), 2-16, 2011

    日本文学協会

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