都市のテクノロジー : モンゴル、ウランバートル市の都市化とコンパクトシティ計画(<特集>都市に(が)居座ること)

書誌事項

タイトル別名
  • Technologies of the City : A Case of Compact City Planning in Ulaanbaataar City, Mongolia(<Special Theme>An Anthropology of the Multiple Temporalities of the City)
  • 都市のテクノロジー--モンゴル、ウランバートル市の都市化とコンパクトシティ計画
  • トシ ノ テクノロジー モンゴル ウランバートルシ ノ トシカ ト コンパクトシティ ケイカク

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説明

モンゴル国の首都ウランバートル市では、近年、地方からの移住者の急増により、移住者たちの居住するゲル(天幕)から排出される煙を原因とする大気汚染が深刻化している。本稿では、都心部のアパート地区をとり囲むようにして拡大を続ける「ゲル地区」に対する都市計画や、コミュニティ参加型開発の取り組みをとりあげ、都市がどのように対象化され、管理運営されているかを考察する。その際、複数の技術の葛藤、組み合わせを追うことによって、本特集のテーマである都市の「居座り」という問題を、都市のテクノロジーという観点から検討する。ウランバートル市では社会主義時代以来、ゲルや固定家屋を塀で囲んだ「ハシャー」という居住単位を移転させるアパート化の手法によって、都市計画がすすめられてきた。アパート化の手法は現在の都市計画にも生き続けているものの、2003年以降の土地私有化政策には対応できていない。それに対して、コミュニティ参加型開発は、ハシャーを私的所有の基盤として強化しつつ、コミュニティとしてつなぐことによって、都市環境を改善しようとしている。この二つの手法が有効に機能しない中、2007年、都市計画改訂のために組織されたJICA調査団が提案するコンパクトシティ案は、アパート化と参加型の手法を組み合わせるものであった。調査団がおこなった住民参加型のパイロットプロジェクトの枠の中で、住民はつくられた「コミュニティ」に組み込まれ、実験的にハシャーのない未来を垣間見る。パイロットプロジェクトの性格上、その未来が実現に繋がるという保証はなく、宙吊りにされているものの、パイロットプロジェクトのやり取りはある種の現実性を有しており、その現実性に都市の「居座り」を置き換える新たなテクノロジーが宿っている。

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 75 (2), 192-215, 2010

    日本文化人類学会

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