フィリピン日系ディアスポラの戦後の「帰還」経験と故郷認識
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- 飯島 真里子
- 上智大学
書誌事項
- タイトル別名
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- The Return Migrations of the Filipino Nikkei Diaspora
- Their Perceptions of “Home” in the Postwar Period
抄録
本稿では、フィリピン日系ディアスポラの第二世代による戦後の多様な帰還現象に注目し、帰還経験が当事者の故郷認識に与える影響について考察する。フィリピン日系ディアスポラとは、戦前のフィリピン(本研究では主にダバオを対象とする)に形成された日本人移民社会にルーツをもち、終戦直後の引揚げ政策により離散を強いられた集団とそのコミュニティをさす。日本人家族は祖国に引揚げたが、日本人移民を配偶者としていたフィリピン人妻とその子ども(日系二世)は残留したため、戦前の移民社会は日本とフィリピンに分かれ、それぞれの戦後を経験した。本論文で扱うディアスポラの帰還現象は以下の3つである。まず、第一の帰還現象として、終戦直後の本国への「引揚げ」を取り上げる。次に、第二の帰還現象として、1960年代末から引揚者によって企画されたフィリピンへの「墓参団」を扱う。この墓参団は、戦中に亡くなった肉親の慰霊だけではなく、日系二世や旧友との再会や居住地の再訪など戦前の移民生活の記憶をたどる旅ともなっている。最後に、第三の帰還現象として、1990年代末から始まった「祖国」日本の国籍取得を目的としたフィリピン残留日系二世の「集団帰国」を取り上げる。 これら3つの帰還は、時期、背景、経路も異なる。第一の帰還のように祖国での定住をともなう帰還形態もあれば、第二、第三の帰還のように一時的かつ短期間の帰還形態もある。また、その移動方向もフィリピンから日本(第一、三の帰還)への流れもあれば、逆方向の流れもある(第二の帰還)。本論文では、「帰還」を分析概念として使用することで、3つの帰還的移動を総合的に検討し、これらの継続性と連関性を明らかにする。これにより、「引揚げ」を中心的に扱ってきた日本帝国史研究と「日系人の還流」を扱ってきた移民研究をつなぐ視点を提供できると考える。 さらには、当事者の帰還経験を分析することによって、第二世代の故郷認識の多様性を描き出し、ディアスポラの「故郷」の存在やあり方が一元的でも固定的でもないことを論じる。
収録刊行物
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- 文化人類学
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文化人類学 80 (4), 592-614, 2016
日本文化人類学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205803321088
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- NII論文ID
- 130005403703
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- ISSN
- 24240516
- 13490648
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可