弘法大師の空思想について

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タイトル別名
  • On the thought of sunyata according to Kukai
  • コウボウ ダイシ ノ クウシソウ ニ ツイテ

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抄録

本論では、仏教の中心的思想の一つである空思想が、弘法大師にどのように受容され、展開されているかを、龍樹の空思想と比較することによって考察した。結論を述べると、空の否定面を説くことに専念し、肯定面は説きえないとした龍樹に対して、弘法大師の空思想は、その肯定面を説き明かしているものである。これは、龍樹が衆生の立場で説いているのに対し、弘法大師は如来の立場から説くことで可能とした。そして、この立場から、世間のすべての言葉が諸法実相を表わす真言であり、また、世間のすべてのものは、如来と同じであるとしたのである。しかし、弘法大師は、空の否定面を全く無視したわけではない。すなわち、如来の立場に到るためには必要なものであるとしているのである。

収録刊行物

  • 智山学報

    智山学報 37 (0), 83-98, 1988

    智山勧学会

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