劇場としての詩 : ボードレール詩篇における演劇性

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タイトル別名
  • Poésie comme théâtre : La théâtralité dans les poèmes de Baudelaire

抄録

西欧文学・思想の伝統における,演劇的な美学モデル-あるいは広義での「演劇性」-は,他ジャンルと同様,詩においても重要な役割を果たしてきた。19世紀フランスの小説・詩においても,演劇性は無視できないテーマだ。本稿は,主に「アレゴリーによる内面のドラマ化」や「役者としての自我の二重化・多数化」といった観点から,ボードレール詩の演劇性を論じる。詩篇「あるマドンナに」や「時計」は,「私」の感情・観念がアレゴリーとして誇張・擬人化され舞台上の存在のように提示される点で,演劇的効果をもつ。ここでは,こうした効果なしには表現されえなかったかもしれない根底的な思考や欲望が,バロックの寓意劇にも比すべきイマージュの力をもって表現=上演されるのである。また「ベアトリス」で語り手が役者に喩えられるように,ボードレール詩の主体は自らを演じる「役者」の性格をもつ。「七人の老人」「小さな老婆たち」では,「私」は語り手の「演出家」的な距離を保ちつつ,同時に,多数のペルソナをもつ「役者」として詩の舞台に現れる(自我の二重化)。詩を語る「私」自体,さらにはこの「私」を存立させる根底的な条件自体が上演され問題化される点で,演劇性は,ボードレール詩の現代性の本質的な特徴なのだ。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205820557440
  • NII論文ID
    110009459818
  • DOI
    10.20767/elfk.39.0_5
  • ISSN
    24242209
    09136770
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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