エキシマーグレードのフッ化カルシウム融液の密度と表面張力(<特集>材料物性から見たフッ化物・酸化物単結晶の育成技術)

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タイトル別名
  • Density and Surface Tension of Excimer Grade Molten Calcium Fluoride(<Special Issue>Crystal Growth Technology of Fluoride and Oxide Developed from the Viewpoint of Their Material and Functional Properties)
  • Density and Surface Tension of Excimer Grade Molten Calcium Fluoride

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抄録

フッ化カルシウム(蛍石)は天然には鉱物として世界の広い範囲にわたり存在する.約70年前にStockbargerが初めて人工の蛍石の合成に成功して以来,主としてブリッジマン法(Bridgman-Stockbarger法)により結晶成長が行われてきた.蛍石結晶は真空紫外域から赤外域までの広い範囲で光の透過性が良く,従来は赤外や可視光の窓材として,具体的には高級カメラのレンズ材料として数多く生産されている.ところが近年,フッ化カルシウム(蛍石)は真空紫外域用の窓材,具体的にはエキシマーレーザーを用いた半導体リソグラフィ用のレンズ材料として注目を浴びるようになった.この用途に適合するためには,真空紫外域の光を照射した際の材料の透過性や耐久性等のスペックが従来用途と比較して,非常に厳しいものであることが判明した.成長に用いられる蛍石の原料も,従来は鉱物から採取した原料(3Nグレード)で充分であったが,本用途ではより不純物純度が小さい合成原料を用いること(4Nグレード)が必須となった.上記の理由から,結晶成長技術も今まで以上に精密な制御が必要となった.3Nグレードの蛍石の融液の報告は過去にいくつか存在するが,エキシマーグレード(4Nグレード)の蛍石融液の報告は今までに無く,測定そのものも非常に困難を有する.蛍石結晶は融点が約1400℃と高温であり,融液からの結晶成長をおこなうので,融液の物性を調べること,つまり融液を理解することは,結晶成長において非常に重要である.本報告では,蛍石融液の密度と表面張力の測定を行った.蛍石融液の密度は,改良型アルキメデス法を用いて測定をおこなったところ,融液の密度と温度はρ=3.767-6.94×10^-4T(K)で相関があった.融点における密度の値は2.594g/cm^3となった.融液の密度の値より,融液の熱膨張係数を求めたところ,温度との相関は正の相関となった.蛍石融液の表面張力はリング沈下法を用いて測定をおこなった.蛍石融液の表面張力の値は,従来の報告例よりも大きい値となり,融液の表面張力と温度はγ(T)=442.4-0.0816×T(K)[10^-3N/m]で相関があることがわかった.以上の結果はリソグラフィ用蛍石結晶育成に対して大変有用な結果となった.今後はより一層蛍石の融液の物性値を詳細に調べることにより,蛍石結晶の結晶成長機構の解明に役立てる予定である.

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