「男女共同参画」時代の母親規範 : 母子健康手帳と副読本を手がかりに

  • 元橋 利恵
    大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • The Mother-Norm in Times of "Gender Equality" : Analysis of the Maternal and Child Health Handbook
  • 「 ダンジョ キョウドウ サンカク 」 ジダイ ノ ハハオヤ キハン : ボシ ケンコウ テチョウ ト フクドクホン オ テガカリ ニ

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抄録

本稿は、母子健康手帳の戦中から現在までの内容および形式の変化より、現代の母親規範はどのようなものなのかを検討する。1990年代以降の子育て政策において、「専業母」による密着的な育児が望ましいとされた近代的母親規範にかわって、父親の育児参加が推奨されてきた。そのようななか育児者はどのようなあり方が望ましいとされているのだろうか。従来の育児メディア研究は、行政文書や育児雑誌から1990年代以降に近代的母親規範が相対化されてきたことを指摘してきた。しかし、行政文書は育児者にとって身近ではなく、育児雑誌は読者に卑近である傾向がある。そこで、本稿では、すべての妊婦に配布され育児者に最も身近で公的なメディアである母子健康手帳をとりあげ、内容と形式の経年比較分析をおこなった。分析の結果次のことが明らかになった。母子健康手帳は、1990年代から2000年代を通じて、「母親」という呼称が中性化した「親」に代わり、一見育児を性中立的なものとして志向するようになっている。しかし、その一方では1970年代から現在に至るまで子ども中心的でより高い育児水準を求める内容に変化している。さらに1990年代には、手帳所有者に自らの内面を書き込ませるページの割合を増加させ、育児を内省させるという形式上の変化がみられた。分析を通して、現代の母親規範は当事者の選択や意志を強調し、母親に対して重い負荷をかけているのではないかという考察をおこなう。

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