エゾヤチネズミの分布様式と除去法センサスにおける捕獲数の考察
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- 樋口 輔三郎
- 林業科学技術振興所
抄録
除去法センサスで生息数を推定する場合に用いるC_n=(N-S_<n-1>)Pの推定式には前提条件が必要である。それは均一な生息条件の環境において,ネズミが機会的に分布し,行動が機会的で,方形区状に配置された罠に対し等しい捕獲率Pをもつことである。エゾヤチネズミの分布様式を10m間隔の方形区の罠における捕獲数xの頻度f(x)でみると,ポアソン分布函数f(x)=e^<-m>m^x/x!からの期待値との適合度の判定では大部分の個体群では機会的分布とみて差し支えない。しかし,時間とともに行動は流動的であるため,時には排列あるいは集中分布の傾向をとることもある(表-2)。この分布様式をもとにして,方形区の罠についての捕獲数xの頻度f(x)の機会的分布をポアソン分布函数から再現した。すなわち,罠数と生息数の関係から,パラメーターのmの値をこの函数に与え,捕獲数xの頻度f(x)をもとめた。罠ごとの捕獲数xの頻度f(x)から除去法の調査日程ごとの捕獲数C_nを予測した(表-2)。生息数25匹で,罠の方形区数5×10の場合の,機会的分布,排列分布,集中分布を作図し,捕獲率Pが一定とみなして,調査日ごとの捕獲数C_nをシミュレートした。このC_nを杉山式図解推定法(図-2)によって作図し(図-4),各分布様式のC_n,S_<n-1>坐標点の回帰線を検討した。その結果,排列分布では多数の捕獲数を1日で取りつくすため,右下りの強い勾配の線となり,集中分布では少数の捕獲数が3日つづき,やがて右下りになる。機会的分布では両者の中間的な勾配の傾向をとる,しかし,直線的な右下りの線でなく,ゆるい曲線を示した。実際のセンサスでは,推定式の前提条件となる一定の捕獲率,機会的分布を充たす場合が少なく,図解法で右下りの線が引けないことが多い。しかし,ネズミが機会的分布をすると仮定した時,調査日程における捕獲数C_nが予測できるので,調査日時点の累積捕獲数から生息数を逆に推定する方法を提案した(表-3)。
収録刊行物
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- 野兎研究会誌
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野兎研究会誌 16 (0), 31-40, 1989
森林野生動物研究会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001206104243200
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- NII論文ID
- 110009931315
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- ISSN
- 24330744
- 09100369
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可