多民族社会適応への多様性と人間関係 : ハワイにおけるボランティアグループProject Danaの活動を通して

書誌事項

タイトル別名
  • Diversity of Acculturation to Multiethnic Society and Human Relationship in Hawaii : A Case Study of Buddhism-Influenced "Project Dana"

この論文をさがす

抄録

アメリカ合衆国は、人口上のマジョリティであるWASP(White Anglo-Saxon Protestant)とマイノリティから構成される多民族社会(Multiethnic Society)である。新たな世紀を迎えて国家間の人の移動がますます加速し、個々人が属する民族・人種や出身国といった定義が曖味になってきている今、全ての国が多民族社会といえるかもしれない。多民族社会と言ってもその定義は様々である。広いアメリカの地で起こる民族や人種に関する問題は日常生活のあらゆる場面と関わり、議論を巻き起こしている。同じアメリカ国内にもかかわらず、本土と、島として独立するハワイ州とでは異なる民族特徴を持つ。本土がWASPを中心としたマジョリティとマイノリティという民族構成を持つのに対して、ハワイ州には全てがマイノリティであるという民族特徴がある。あるいは、全ての民族がマジョリティとしての力や権力を持つといえるかもしれない。この論文の目的は、多民族社会ハワイにおける福祉問題を仏教精神のもとに活動しているProject Danaというお年寄りへのボランティアグループを通して考察し、その活動や精神に見られる多民族的な特徴や人間関係を考察することである。Project Danaは、民族や宗教に関係なく、全ての人々を受け入れており、selfless givingという仏教の布教の精神を掲げて、お年寄りが充実した生活を送れるように手助けをしているボランティアグループである。浄土真宗本願寺派モイリイリ本願寺から1989年に始まった活動は、1999年に10周年を迎えた。ホノルル市を中心とした活動はハワイ州全体とカリフォルニア州のフレスノ別院とベニス本願寺でおこなわれている。約700名程のボランティアはシニアを中心メンバーとして構成され、ケアを受ける人は約750名にわたる。Project Danaが仏教のモイリイリ本願寺から始まったということで、仏教的な特徴があるのではないか、また、日系人メンバーがボランティアの中心であることで、日系人的特徴が実際の活動の中に見られるのではないかという疑問への解明を試みた。更に、活動の中でおりなされるケアをする人と受ける人の人間関係と異文化社会への適応について明らかにした。この論文は、文献による研究と、2000年10月上旬にハワイのホノルル市にておこなった現地インタビューに基づいている。

収録刊行物

  • 人間関係学研究

    人間関係学研究 9 (1), 71-79, 2002

    一般社団法人 日本人間関係学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ