断片聴覚とワントク・イデオロギー : パプアニューギニアのグラスルーツによるギターバンド音楽の受容と実践

書誌事項

タイトル別名
  • Fragment Hearing and Wantok Ideology : Perception and Practice of Guitar Band Music among the Grassroots of Papua New Guinea
  • ダンペン チョウカク ト ワントク イデオロギー パプアニューギニア ノ グラスルーツ ニ ヨル ギターバンド オンガク ノ ジュヨウ ト ジッセン

この論文をさがす

説明

本論では、固有言語の同一性に基づいて想像される「ワントク」の関係を自己認識の基盤においているパプアニューギニア(PNG)の「グラスルーツ」に焦点を当て、近年主要な文化表現の様式となっているギターバンド音楽について、特に多言語で歌われるダンス歌謡の受容とPNGの民衆意識との関係について考察する。野外で催されるダンスコンサートでのグラスルーツの反応は一見散漫なように見えるが、FMラジオ番組やカセットアルバムの形でほぼ全国的に出回っている国産の「ロコル」歌謡に人気が集中している。大半のロコル歌謡の歌詞は固有語で歌われており、ピジン語と英語は断片的に用いられている。しかし、このような歌詞の内容を十全に理解できないはずにも関わらず、異なる固有語を持つ大多数の聴衆はロコル歌謡を「PNGの音楽」として肯定的に聴取している。そこで、この認識作用をモデル化するために「断片聴覚」と「ワントク・イデオロギー」を考えた。断片聴覚とは、歌詞のメッセージの十全な理解よりも、歌詞の文脈が断ち切られて生じる「呼びかけ」の喚起力に反応する聴取のあり方である。ワントク・イデオロギーは、呼びかけを感受し、PNG住民として自分と同じような生活世界を分かち合うグラスルーツの主体として想像するための概念装置である。このふたつの認識作用によって、ロコル歌謡がグラスルーツによるグラスルーツのための様式として形作られているのである。

収録刊行物

  • 民族學研究

    民族學研究 66 (3), 301-319, 2001

    日本文化人類学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ