キュウリ果実の低温障害に伴う表皮構造の変化

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タイトル別名
  • Morphological Changes in Cucumber Fruit Surfaces Associated with Chilling Injury
  • キュウリ カジツ ノ テイオン ショウガイ ニ トモナウ ヒョウヒ コウゾウ

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抄録

キュウリ果実‘女神2号’,‘宝来’の低温障害に伴う表皮構造の変化を走査型電子顕微鏡で観察し, ピッティングの発生等の障害発生機構を考察した.<br>1. キュウリ果実を5及び20°Cに貯蔵し, 適宜取り出し表皮切片を作成して, 観察した結果, 収穫直後の果実表面は, 肥厚した細胞壁を持つ表皮細胞が並びワックスで覆われていた. その中に約24×30μmの気孔や毛茸 (trichome) が散在し, 表皮及び柔細胞が突出して出来たと考えられるイボがみられた. イボの上には5節から成るトゲが着いていた. しかし, これらの構造は, 栽培中や収穫時の取り扱い中に剥離, 脱落したものが多かった. イボの脱落部は表皮が剥がれ柔組織が露出していた. また, イボには, 微生物の菌糸や胞子が付着しているのが見られ, 気孔に侵入しているものもあった.<br>2. 5°Cで3日間貯蔵し, ピッティングがわずかに見られた果実の表皮はしゅう曲しているのが見られた. ピッティング発生部を観察すると, 70~130μmの小さな孔があいており, 肉眼で観察されるピッティングだけでなく, ピッティング部分の微細構造に大きな変化が起っていることがわかった. 低温下で貯蔵した果実では, このようなしゅう曲, 小さな孔や陥没が観察されたが, 20°Cではそのような変化は認められなかった.<br>この小孔や表皮組織の陥没は, 気孔を含む場合が多く, また気孔副細胞部に亀裂が入り, 気孔が内側に落ち込むものもみられたことから, 気孔の陥没が原因と思われた. そして, 陥没は内部柔組織の崩壊によるようにすべて内側に陥没していた.<br>3. 5°C貯蔵期間が長くなると, 果表面に白濁粘液が漏出してきた. この部分を検鏡すると, 10μm程度の小孔が観察され, この孔から液が出て来ると思われたが, 小孔の発生原因は不明であった. この時期のピッティング部には, 肉眼ではまだ見られなかったが, 糸状菌の発生があり, ピッティング部は, 菌そうで覆われ菌糸が内部柔組織に侵入していた.<br>以上の結果から, キュウリ果実の低温障害に伴い表皮構造が大きく変化することがわかり, その原因は内部柔組織の崩壊によると思われ, 特に気孔下の柔組織で多く起ると推察した.

収録刊行物

  • 園芸学会雑誌

    園芸学会雑誌 56 (2), 187-192, 1987

    一般社団法人 園芸学会

被引用文献 (4)*注記

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参考文献 (6)*注記

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