ニホンナシの黒斑病耐病性突然変異

書誌事項

タイトル別名
  • Resistant Mutant to Black Spot Disease of Japanese Pear ‘Nijisseiki’ Induced by Gamma Rays
  • ニホンナシの黒斑病耐病性突然変異〔英文〕
  • ニホンナシ ノ コクハンビョウ タイビョウセイ トツゼン ヘンイ エイブン
  • Resistant Mutant to Black Spot Disease of Japanese Pear ^|^lsquo;Nijisseiki^|^rsquo; Induced by Gamma Rays

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抄録

ニホンナシの主要栽培品種である‘二十世紀’はナシ黒斑病に罹病性であり, その防除には多大な労力が払われている. 1962年, ガンマーフィールドに‘二十世紀’を定植し. 緩照射を続け, 1981年に無病徴の1枝(γ-1-1) を選抜した. このγ-1-1の耐病性の程度を調べるため, 葉および果実に対する病原菌の胞子および毒素(AK-毒素I)の接種試験を行った.<br>各葉位に対する胞子接種で, 耐病性品種である‘長十郎’は若い第2葉で20%に病徴がみられたが, 葉齢が進むと病徴は認められなくなった. 罹病性品種の‘二十世紀’では第2葉から第5葉まで100%と高い病徴の発現を示した. これに対して, γ-1-1では第2葉で80%, 第3葉で17%に病徴を示したが, 第4葉以下では病徴が認められなかった. また, 果実に対する胞子接種で, 全生育期間を通して‘二十世紀’には明らかな病徴が認められたが, ‘長十郎’では全く病徴は認められなかった. これに対して, γ-1-1は幼果に黒斑病徴とは異なる淡褐色斑を生ずるが, 接種時期が遅れるに伴って, その色調はさらに淡くなり, 淡褐色斑の発現頻度も低下した. 葉および果実に対するAK-毒素I処理を行ったが, 胞子接種とほぼ同様の結果が得られ, γ-1-1は中位の耐病性を示した.<br>‘二十世紀’はリンゴの病気である斑点落葉病にも罹病性であると報告されており, この病原菌の胞子および毒素 (アルタナリオライド) の接種試験を行った. ‘二十世紀’, γ-1-1ともに罹病性を示すが, その程度は低く, 栽培上支障はないと思われる.<br>このように, γ-1-1は原品種の‘二十世紀’とは明らかに異なり, 黒斑病に耐病性傾向を示した. しかし, 耐病性品種の‘長十郎’に比べて耐病性の程度はやや弱く,これはγ-1-1が周縁キメラであることに帰因していると推察される. 今後, γ-1-1が周縁キメラであるか否かの確認とほ場条件下での耐病性の程度を検討する必要がある.

収録刊行物

  • 園芸学会雑誌

    園芸学会雑誌 57 (2), 159-166, 1988

    一般社団法人 園芸学会

被引用文献 (9)*注記

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参考文献 (9)*注記

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