飲酒家の口腔咽喉・食道・胃の発癌リスク

  • 横山 顕
    国立病院機構久里浜アルコール症センター臨床研究部

書誌事項

タイトル別名
  • Alcohol and Risk of Cancer in the Oropharyngolarynx, Esophagus, and Stomach
  • インシュカ ノ コウクウ インコウ ショクドウ イ ノ ハツガン リスク

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説明

アルコール依存症患者の食道ヨード染色を用いた内視鏡検診では, 口腔・咽喉(1.1%), 食道(4.1%)と胃(1.4%)に著しい高頻度(計6.6%)で癌が診断される. 著者らはこの集団の発癌背景の研究から, 飲酒関連発癌のリスク評価には, 従来の飲酒喫煙習慣の評価に加えて, 新たに以下の項目が役立つことを明らかにしてきた. 1) アルコール代謝酵素の遺伝子多型では, アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)のヘテロ欠損型とアルコール脱水素酵素2(ADH2, 新名ADH1B)の非活性型の組み合わせが相乗的に口腔・咽喉・食道癌のリスクを高め, 前者は同部位の多発重複発癌にも強く関連していた. 2) 飲酒で赤くなる反応を質問する簡易フラッシング質問紙法は, ALDH2欠損を約9割の精度で判別し, 遺伝子解析に類似した食道癌リスク評価を可能にした. 3) 赤血球MCVはALDH2欠損者の飲酒, 喫煙, 栄養不良で増大し, 口腔・食道・胃の発癌リスクの評価に役立った. 4) 口腔・咽喉・食道のメラノーシスは, 同部位の異形成や癌が併存する可能性を示唆する内視鏡所見であった. 5) ペプシノゲン法により慢性萎縮性胃炎を評価すると, アルコール依存症患者では慢性萎縮性胃炎の進行例が多く, ALDH2欠損とともに相乗的に胃癌のリスクを高めた. 以上の新知見に基づく新しい発癌リスク評価を組み込んだ癌予防の取り組みが今後の課題である.

収録刊行物

  • 医療

    医療 60 (6), 357-364, 2006

    一般社団法人 国立医療学会

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