新生児期に白血病様血液像を呈したDown症候群の1例

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タイトル別名
  • A Case of Down Syndrome with Transient Leukemia-like Blood Picture and Jaundice during New Born Period
  • シンセイジキ ニ ハッケツビョウヨウ ケツエキゾウ オ テイシタ Down シ

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抄録

Down症候群に合併する先天性白血病に関して, 最近長尾らのいうtransient abnormal myelopoiesis (TAM)という概念が注目され, 白血病様血液像を呈する疾患群の一部は, 白血病とは区別して取扱われている. 我々は, Down症候群で, その新生児期に白血病様血液像と黄疸を認め, TAMと考えた症例を経験し, 電顕的観察を行つたので報告した.<br>症例は, 21 trisomyのDown症候群男児で, 入院時末梢血で白血球数は59,800, 約50%に骨髄芽球ならびに前骨髄球を認めた. 末梢血幼若細胞の電顕的観察では, 白血病細胞に見られるような異型性は認められなかつた. その後約1ヵ月後に末梢血の異常所見は無治療で正常化した. なお, 黄疸と肝機能障害は約3ヵ月後に正常化したが, HBs抗原は陰性で, 黄疸の原因は不明であつた.<br>脾腫を伴わないFelty症候群<br>Felty症候群はロイマチ性関節炎, 顆粒球減少症と脾腫を伴う症候群である. 近年これらの症例には抗顆粒球抗体が存在することが示唆する臨床・検査室所見が多い. 著者らも既に顆粒球―結合IgGの量的のimmunoassayが本症を規定するために有効であることを報告した. 今回血清反応陽性―変型性関節ロイマチ症, 重症顆粒球減少症があるが, 脾腫を伴わない症例(73才♂)を観察, 顆粒球―結合IgGと血清抗顆粒球抗体について検索した. 脾摘前はこの患者の顆粒球上では, 細胞ごとIgGは73から110×10-14gであつた. 典型的Falty症候群(16例)では22から220×10-14gであり, 単なるロィマチ性関節炎では20×10-14g以下であつた(21例).<br>正常供血者および脾摘後のparaformaldehyde-fixed granulocytesと脾摘前の患者血清とで培養すると, ロイマチ症例から得たコントロール血清より以上の一層のIgGの結合がみられた. 同様の成績は典型的Felty症候群の血清とparaformaldehyde-fixed granulocytesで培養した時にもみられた. 以上の成績は脾腫を伴わない本例のごときロイマチ性関節炎の症例のあること, およびかかるin vitroの検索は本症の経過を限定するのに有効であると述べている. (表2, 文献9)

収録刊行物

  • 医療

    医療 33 (8), 799-802, 1979

    一般社団法人 国立医療学会

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