唾液腺腫瘍由来の初代培養細胞に関する組織化学的ならびに電子顕微鏡的研究

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タイトル別名
  • Histochemical and Electron Microscopic Studies on Primary Culture Cells Derived from Human Salivary Gland Tumors
  • ダエキセン シュヨウ ユライ ノ ショダイ バイヨウ サイボウ ニ カンスル

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抄録

きわめて多様な像を示す唾液腺腫瘍の生物学的性状を把握するために.増殖細胞を選択的に検索できる初代培養法を用い, 組織化学的ならびに電子顕微鏡的観察を行った。<BR>研究材料は東京医科歯科大学口腔外科を受診した唾液腺腫瘍患者19症例で, そのうち.多形性腺腫14例, 粘表皮腫3例, 腺様嚢胞癌2例の試験切除片および手術摘出物より得た。培養法は直接カバーグラス法に準じ, カバーグラスおよびスライドグラスを用い, 培養液は20%仔牛血清を添加したEagle MEMニッサンを用い, 37℃のCO2培養器にて行った。<BR>多形性腺腫由来培養細胞の遊出は比較的緩慢で, 類円形ないし紡錘形の細胞が主体をなし, 組織化学的にはin vivoと同様LDH, SDH, MDH, Ac-pの活性が認められ, Al-p陽性細胞も散見された。細胞質および細胞間質にPAS陽性物質が散見され, 粘液分泌能を有する細胞も認められたが, 酸性ムコ多糖はほとんど認められなかった。大部分の遊出細胞にトノフィラメントが認められたが.その量および集束状態は細胞により差があった。トノフィラメントと同時に分泌顆粒を有する細胞も混在していた。<BR>粘表皮腫由来培養細胞は上皮様細胞の活発な増殖を示し, 主に扁平上皮様細胞からなるが, 粘液細胞やいわゆる中間細胞も散見された。<BR>腺様嚢胞癌由来培養細胞は, 増殖は緩慢であったが, 細胞の配列は不規則で, 細胞間腟は著しく拡張していた。遊出細胞の電顕所見では, 核が大きく, 細胞内小器官の発達が悪いものが多かった。また多形性腺腫同様, Al-p陽性細胞が散見された。<BR>唾液腺腫瘍由来初代培養細胞は, 組織化学的にも, 電顕的にも, 母組織の性状を比較的よく保持しつつ, 各組織型および症例に応じ多彩な像を呈していた。多形性腺腫では, 扁平上皮様細胞ないし扁平上皮と腺上皮の両者の性格を有する細胞が, 粘表皮腫では扁平上皮様細胞ないしいわゆる中間細胞が, 腺様嚢胞癌では未分化な上皮様細胞が増殖の主体をなすものと推定された。

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