象牙質形成不全症 (Dentinogenesis Imperfecta) の臨床的ならびに組織発生学的観察

  • 川崎 孝一
    東京医科歯科大学歯学部第三歯科保存学教室
  • 伊藤 昌男
    東京医科歯科大学歯学部第三歯科保存学教室
  • 石原 伊和男
    東京医科歯科大学歯学部第三歯科保存学教室
  • 松元 仁
    東京医科歯科大学歯学部第三歯科保存学教室
  • 永沢 恒
    東京医科歯科大学歯学部第三歯科保存学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical and Histogenetic Observations of Dentinogenesis Imperfecta
  • ゾウゲシツ ケイセイ フゼン Dentinogenesis Imperfecta ノ リンショウテキ ナラビニ ソシキ ハッセイガクテキ カンサツ

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抄録

象牙質形成不全症 (Dentinogenesis Imperfecta) は骨形成不全症 (Osteogenesis Imperfecta) の症候群に随伴して起る場合と, 単独に出現するものとがある。著者等は汎発性骨折, 青色鞏膜, 難聴等のvan der Hoeveの三徴候が見られず, 骨形成不全症とは無関係で, 単独に発症したと思われる永久歯群の象牙質形成不全症を20歳の女性で観察した。本症は常染色体性優性遺伝で非常に浸透性の高い疾患で, Talbot (1893) によれば1882年以前にBarretによって報告されて以来, 多くの報告が相次いでいる。しかし特に組織学的には十分に万人を納得させるような実証を伴っていない。著者等は本症の本態を知るため, 先人の業績を参考にしながら, 臨床的, ならびに顎骨中の歯根形成途上の歯胚を用いて組織発生学的観察を行なった。<BR>その結果, 萠出歯はX線写真で77を除いた歯牙に, 歯髄腔の消失が見られ, 歯冠はすべて半透明の紫色がかった灰青色ないし褐色の変色が見られ, エナメル質には縦走する亀裂が多数見られると同時に, 高度の咬耗が観察された。摘出歯胚の歯根は既に透明度が高く, 歯髄を透視出来る程であった。歯冠部髄周象牙質には封入体が多数みられたが, 脈管と断定出来るものはなかった。封入体は内外二層の異なった構造物からなり, 内層は細胞成分の見られるものや, 大小種々の空隙からなり, 外層は細管のない好塩基性基質から成り, 周囲の象牙質と画然と区別された。この所見は研磨切片や脱灰切片とも全く一致している。研磨切片は光学顕微鏡下で内層構造は暗く観察されるが, 内部に気泡を生じたためで, 光を強く屈折するためであり, 歯胚の生活状態で既に見られる。象牙質には他に種々の変化が見られたが, 歯髄腔には巨大な象牙粒の他に大小種々の遊離性象牙粒が多数認められると同時に一部歯髄組織に萎縮性変化もあり, 歯髄腔の消失現象は歯胚の状態で既に観察される。Burton vitalometerによる歯髄の電気診に対する反応の有無, 矩形波パルス列刺激に対する反応からも組織標本の結果の十分な裏付けが得られた。

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